『中世のパン』を読んだ記録(なぜパンのレシピは時間に厳格なのかについて)

私は毎週ごとにパンを作ってはいるが,その作り方は,毎週異なる。二つの理由がる。

1.毎週,実験を行っているため(粉量や水および種の量を変えるだけで実験になる。もちろん,焼成条件を変えることであってもである)。

2.発酵具合が毎週ことなる。これは,主に,室温一次発酵をしているためである。温度条件を一定にできないため,発酵はその時次第である。

しかし,一般にパンの作り方(レシピ)は,材料と時間についてかなり厳格である。そのことについて,家庭において作るパンの例に挙げられる「バターロール」を例に疑問を記事にしたことがある(自分で作って食べるためのパンを考える(その6:所要時間について考える)〜バターロールレシピへの疑問から〜)。

パンのレシピがなぜ時間について厳格なのか?,と,いうことについて,私個人としては回答は持っているのであるが,それを,文献として明示してくれているものに出会っていなかった。しかし,やっと,そういう文献(本)を読むことができた。

・フランソワーズ・デポルト著,見崎恵子訳,中世のパン (白水Uブックス),白水Uブックス(2004/10) [単行本は1992/5出版,原著はフランスにおいて1987年出版].

この本は,フランス(地理的には,現代のフランス:中世のフランスは現代のフランスよりかなり狭い)の都市における「パン事情」を歴史学者が書いたものである。扱っている時代は,中世となっているが,一般に,中世後期と呼ばれる12世紀ー16世紀である。時代背景としては,十字軍がほぼ集結し,フランスが英国との百戦戦争をしていた頃である。

章の目次だけ示そう。序,十章の論述,および,結論から構成されている。

・序

・第一章:麦畑から粉挽き場へ

・第二章:パンづくり

・第三章:パン屋の共同体と同職組合

・第四章:フランスパン巡り

・第五章:パンの販売場所

・第六章:なくてはならない市外からパン

・第七章:自家製のパン

・第八章:パンの価格,原則と実際

・第九章:都市の中のパン屋

・第十章:パン消費の数量的評価の困難

・結論

この本は,読みやすい本ではない。

第一に,レイアウトが読みにくい。文字が詰まっているのである。原著が出版された1987年にはPCは未だ一般的なものではなく,大学の研究者もタイプライタを使っていた時代である。そして,日本では,「ワードプレッサ」がやっと一般に使えるようになり始め頃である(一太郎の初期のバージョンの時代である:Microsoft Word日本語版はまだない頃)。その頃の著作であるから,執筆や編集作業の多くは手作業であったであろう。それが,「文字が詰まっている」理由ではないかと推察する。今なら,もっと読みやすいレイアウトになったであろと思う。

第二に,この本は,「フランスの中世」に関する予備知識を,当然ながら必要とする。中世のフランスは,ローマカトリック教会を支える基盤のような土地であった。このころ多くのローマ教皇が「フランス人」である。そのため,当然のように修道院(ヴェネディクト会,クリュニュー派,シトー会など),騎士団(聖堂騎士団=テンプル騎士団,聖ヨハネ騎士団=病院騎士団=ロードス島騎士団),有名なフランス王(フィリップ二世,聖ルイ=ルイ九世,シャルル7世=百年戦争に勝利した王)などが躊躇なく出てくる。

なぜならば,各教会や修道院や騎士団は領地を持っており,自ら小麦を育て・パンを作っていたし,各王は年のパン供給の責任と管理が重要な政治であったからである。

本を読み始めたら,各章にメモ書きしたいことが多く,付箋を付けていたらハリネズミになってしまった。

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この本の結論の書き出しが興味深い。引用させていただく。

「パンは,明らかに,西欧キリスト教世界の物質的・精神的遺産の一つである。フランスにおけるパンの歴史は,いわゆる中世期に始まったものではないし,また一六世紀を持って完結するものでもない。しかし,まさに中世というこの長い時代において,パンづくりに決定的な発展がみられたのであり,パンが国民的伝統として根づいたのもこの時代であった。」

現代のフランスにおいてパンは文化を代表するものである。日本においても,多くのパン店がフランス語の名称を使用している。しかし,著者は,それが中世に戻るといっているのである。それを歴史学的に論述したのがこの本である。

横道にそれるが,塩野七生さんの十字軍物語〈3〉に興味深い記述がある。英国のリチャード一世率いられた第三回十字軍が,現代のシリアの地中海沿岸での「アルスーフの戦闘(1191年9月7日)」に勝利し,戦闘により死んだ馬を焼いて食べる(塩野七生さんは「バーベキュー」と記しているが)ところである。このころ,十字軍への補給はジェノバの船団が,シリア沿岸から行っていたが,補給食糧は日持ちのする「パンやチーズ」が主であった。その上で,死んでしまった馬を焼いて食べるのである。十字軍物語〈3〉から以下を引用させていただく(単行本118ページ)。

「アルスーフの町の広場という広場から,バーベキューの煙が立ちのぼることになってしまったのだ。ピストン輸送による補給で,リチャード軍は水にも食にも不足していなかった。だが,季節はいまだ夏。補給される食はどれも腐敗しにくいパンやチーズで,肉を口にすることなどは,指揮官クラスでもなっかったのである。また,南欧の人ならば魚も多く食するが,北ヨーロッパの男たちとなると,肉を食べないと元気が出ないと思い込んでいる。いつもは鹿でも猪でも食べるのだから,馬の肉でも変わりはなかったのだった。」

肉を食べなければ元気の出なかった北ヨーロッパの男たち(リチャード一世=獅子心王は英国王であるが,十字軍の主体はフランス人であり,最も勇敢=野蛮な聖堂騎士団=テンプル騎士団はフランス人でである)が,十字軍が終わった頃には,パンを中心に考える人々になっていたと読みとれるのである。

さて,「中世のパン」を基に,パンのレシピの時間に戻る。

中世のフランスにおいて(おそらく他国においても),小麦は統制品である。小麦を作るのも,製粉も,販売も領主(王,世俗領主,聖職領主を問わず)に制限を受けていた。

パン屋でさえ,自由に小麦を買えず,領主に指定された市場において購入しなければならなかった。街中で売られている小麦を使ってパンを焼くことさえ「違反」であり,罰金の対象であった。

小麦が統制品であったのは,小麦が十分に多くなかったからであり,パン屋は小麦の在庫を多く持つことさえも制限されていた。つまり,毎日市場に行って,小麦を買い,

「粉挽」,「ふるい掛け」から行っていた(小麦粉は当時売られていなかったようだ)。そして,パンは,毎日,当時の正餐である昼食に間に合うように焼き上げなければならなかった。午前中には,ほとんどのパンを店頭に並べなければならなかったのである。

加えて,当時のフランス都市でも「焼きたてパン」に価値があったようであり,パンを在庫にしておくことも「禁止」だったのだ。

こうなると,パン屋の仕事は,毎日同じ時刻に同じ作業をすることになる。当時の窯は薪を燃やした熾で焼くのであるから,パン生地発酵と窯の準備は並行作業となる。どちらかが,先行しても遅れてもパンはうまく焼けない。

さらに,パンの重さ(値段)は,厳しく当局に監視(監視人が見回っていた)されていたから,いい加減なパンを焼くわけにもいかない。結果的に,パンづくりは時間に対してかなり厳密は作業にならざるを得なかった。それができることが,「パン職人・パン屋の親方」である必要条件であったのである。

パンを焼き上げる時刻の伝統について,志賀勝栄さんの著書パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)という本に,「いまでもヨーロッパに朝5時半にパンを買いに行くという風習がある」(p. 25)という記述がある。「ヨーロッパ」と一般化しているが,主にフランスパリを中心としてであろう。昼食から朝食用になったとはいえ,いまでも,フランスもパン屋は毎日パンを同じ時刻にパンを売れるようにしなければならない。

これが,同じヨーロッパでも,スイスやドイツの田舎に行くと変わる。舟田詠子さんの著書パンの文化史 (講談社学術文庫)207頁に「パンの保存」という表題の節があるが,そこでは田舎の自家製パンは,2,3週間まとめ焼いていた。という解説がある。

そして,「中世のパン」においても,都市外から市場に売りにくる「農家のパン」は貧しい人には便利な「日持ちにするパン」であったと記述されている(文章は変更した。同書 p. 122)。

まとめると,中世のパン「屋」は同じ時刻に焼き上げるためのパンのレシピを運用していたのである。それは,都市住民に安定してパンを供給するためであった。パン屋がストライキをすると,都市住民が植えることにならからである。

パンのレシピが時間に対して「厳格」なのは,このように,焼き上げ時刻の制約がかなり課されていたからであろう。

これは,おそらく,現代のパン屋さんでも同様であろうが,粉挽や薪の扱いが無くなった分,パン屋の仕事は減じたと思われる。

そして,最も言いたいことは,家庭におけるパンづくりは,レシピの時間を厳格に守る必要はないということである。もちろん,夜中や早朝に作業はしたくないから,それなりのスケジュールは必要であるが,生地の具合を見ながら作業ができれば十分であろう。

少なくとも現代日本において家庭でのパンづくりは,時間に厳格なレシピを守って行う必要はないであろうと考える。

 

 

 

日本人は何を食べさられているのか? 〜小麦編その1:小麦の値段〜

私のパン以外のブログに「日本人は何を食べされらているのか?」という記事が三つある。

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?その2(塩豚のソテーから考える)

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?その3(イチゴジャムを作ってみて)

このPane neroというのはパンのことしか書かないブログであるが,パンに関わることなら何でも書く。

よって,小麦のことは,重要な関心事なので,日本人が食べている小麦のことは,こちらのブログに書く。

日本人が食べている小麦は多面的に考えないとならない。しかし,どのような小麦を食べているのかということは知っていて良い。だから,何回かに分けて書く。一回で書けないほど,複雑のなのである。

資料は農林水産省が公開している「麦の需給に関する見通し(平成27年3月)」を基にする(URL:  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/27_mitoosi.pdf )。

この資料は,麦に関する様々なことを教えてくれる。しかし,官庁の資料の特徴として理解し難いように記載されている。また,肝心なことは,明記されていない。そのため,いわゆる行間を読むという作業が必要になる。

この記事においては,輸入小麦の値段構成について考える。上記の資料を基に,小麦の政府売り渡し価格について考えると以下のような推定ができる。

表1 小麦の政府売り渡し価格値段構成推定(平成27年4月分)
表1 小麦の政府売り渡し価格値段構成推定(平成27年4月分)

上記農水省の資料の時点における小麦国際価格は約4.8 $/ プッシェルである。1トン当たりに直すと$220となる。これに,海上輸送費,為替,港湾諸経費が関係する。一方,平成27年4月の小麦政府売り渡し価格平均値は¥60,070である。

上記の農水省資料に用語が示されているが,小麦政府売り渡し価格にはマークアップと呼ばれる輸入差益が上乗せされている。その金額は,資料には明記されていない。よって,マークアップの金額は推定するしかない。

小麦輸入価格は,¥31,222と見積もれる。それに,港湾諸経費として15%を上乗せした。すると,¥35,905となる。この金額と政府売り渡し価格の差額がマークアップの額となる。推定すると,¥24,165となる。これは,政府小麦政府売り渡し価格の40%の相当する。

図1 小麦1トン当たりの政府売渡価格の構成(推定)
図1 小麦1トン当たりの政府売渡価格の構成(推定)

マークアップなるお金が,国内小麦栽培に利用されているであろうから,そのもの自体を批判するつもりはない。

ただし,以下の点において批判する。

1.マークアップは税金ではないということ:マークアップは,農水省が決めるものであって,財務省が決める税金ではない。しかし,国に入る差益なのであるから,「実質的には税金」と考えるべきである。つまり,パンを作る・食べるということは,国に「税金みたいなモノ」を納めていることになる。

2.マークアップにも消費税が課税されるということ:マークアップにも消費税が課税される。まるで,ガソリンの揮発油税に消費税が課税される二重課税と似た構造である。

このことは,小麦粉1 kgの値段として見てみたほうがわかり易い。

農水省の資料「輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)」(平成28年3月:URL http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/pdf/160309-02.pdf)には,小麦粉の減価率が記載されていて,その値は27%である。その値を用いると小麦粉1 kgの値段構成を以下のグラフのように見積もることができる。

図2 輸入小麦粉1 kgの値段構成推定
図2 輸入小麦粉1 kgの値段構成推定

輸入小麦粉1 kgあたり,国には「マークアップが¥24.16」と「消費税¥17.8」が入ることになっている。合わせると¥41.96円である。小麦粉1 kgあたり税込価格の17.46%である。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日』という実に「つまらない本」がある。しかし,何らか得るところはあって,この本の41頁に世界の主要穀物の輸出国と輸入国の表が掲載されている。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

小麦だけに関して言えば,輸出国トップ4は「米国,カナダ,EU25,オーストラリア」である。一方,輸入国トップ4は「ブラジル,エジプト,日本,アルジェリア・インドネシア」(2007年度)である(アルジェリアとインドネシアは同量)。日本に輸入されている小麦は,農水省資料によると米国産,カナダ産,オーストラリア産である。

相当昔。古代ローマ時代,エジプトは小麦の一大輸出地域であった。「パンとサーカス」として有名な古代ローマのパンはエジプトから輸入された小麦である。

そのエジプトが大量に小麦を輸入しているということに驚く。しかし,日本のように高価な小麦の値段としては販売されてはいないであろう。古代のピラミッドの頃からパンを食べてきたエジプトにおいて,「小麦税」なるものを課税したら,政変が起きるに違いない。

なお,古代ローマにおける「パンとサーカス」の「パン」とは,社会的弱者となったローマ市民に無料で小麦粉を配った(それなりに収入にある人には有料)ことを言う。つまり,当時の社会保障政策である。

「貧乏人は麦を食え」といった総理大臣も戦後いたが,今や,麦を食べるということは,とても高級なことになってしまった。

日本人は,いったい,食べるために,何のお金を払っているのであろうか?


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2016年3月20日週のパンの焼成条件

2016年3月20日秋のパン(過去記事:パンを焼く日(2016年3月20日週のパン四種類))においては,焼成条件に関する実験を試みた。

 

2016年3月20日週のパン四種類
2016年3月20日週のパン四種類

簡単にいってしまえば,焼成温度を下げた。

・プチパン:230°C→200°C。

・パン・ド・カンパーニュ:210°C→200°C。

パンの文献(本ブログ:参考文献参照)を読んでいると,パンの歴史は1万年以上ある(1)〜(3)にもかかわらず,最新のパンの研究においても,その中心は,「発酵」に重点が置かれている(6)ー(8),(10)

しかし,パン作りにおける最終工程である焼成条件をどのように決めるかについての知見を得ることができない。

唯一,志賀勝栄さんの著書「パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)(1)において,フランスパンの代表であるバケットの焼成を高温(250°C)とし短時間(20 min)とする旨の記載がある。しかし,志賀勝栄さんのもう一つの著書「酵母から考えるパンづくり(4)を読むと上火255°C,下火225°Cとして,32 minとなっている。出版年が後者の著作の方が古いため,前者の著作の間にレシピが変わったことは考えられる。

このような背景においては,自分で作るパンの焼成条件は,自分で見出すしかない。

そのため,今回の記事のような実験を試みることになった。

温度を下げた動機は,パンを少し柔らかくするためである。私の作るパンはリーンなパンであり,いわゆるハード系と呼ばれるパンになる。しかし,リーンなパンは,時間の経過に伴い,内部(クラム)の水分が表面(クラスト)の染み出してるため,徐々に柔らかくなる。しかし,日数が一定以上すぎると,その染み出しが終わり,表面から乾燥し始める。よって,内部にどれだけ水分を保持されるかということがパンの日保ちに関係する。一方,焼成温度を下げると,パンの生焼けが起きやすい。表面に焼き色が付かない状態である。さらに,焼成条件には,焼成時間というもう一つのパラメータが関与する。

こういう,面倒なことは,理屈を考えるより,やってみる,つまり,「実験」する方が早く答えが出る。

実験において重要なのは,実験条件だけではなく,結果をどう評価するかである。評価方法を事前に決めておかないと,その実験は,全く意味をなさない。

今回の実験における評価項目は焼き色,釜伸び具合,および,クラムの状態とした。ただし,プチパンは切断していないため,焼き色と釜伸び具合となる。釜伸びは,下面の割れ具合で評価する。

結果を焼成の順番に示す。

1.無塩プチパン:焼成条件 200°C×24 min

無塩プチパン2016年3月20日バージョン上面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン上面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン下面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン下面

2.プチパン:焼成条件 200°C×23min

プチパン 2016年3月20日バージョン上面
プチパン 2016年3月20日バージョン上面
プチパン2016年3月20日バージョン下面
プチパン2016年3月20日バージョン下面

3.レーズンプチパン:焼成条件200°C×20 min

レーズンプチパン2016年3月20日バージョン上面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン上面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン下面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン下面

4.パン・ド・カンパーニュ:焼成条件 200°C×35 min

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン下面
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン下面
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態

上記の写真を見ると,上面の焼き色は,個人的判断であるが,妥当と考えている。また,1〜4すべてにわたって,下面の極端な焼き色(いわゆる焦げ)はない。

しかし,1の無塩プチパンと2のプチパンの下面には割れが多く発生している。3のレーズンプチパンと4のパン・ド・カンパーニュの下面の割れはないと考えてよいであろう。

4 パン・ド・カンパーニュのクラムの状態も,妥当と考えている。

上記の写真から考えて,プチパンおよびパン・ド・カンパーニュとも焼成温度を200°Cに低下させたことは,上面の焼き色から,問題なさそうである。しかし,プチパンの焼成時間23 minとか24 minは長時間過ぎたように思われる(下面に割れが生じてしまっていることにより)。

パン作りとは,すべての工程にトラップが仕掛けられている。全く気を抜くことができない作業だらけである。そういう作業は総じて「職人作業」と呼ばれるのであるが,エンジニアの作業は,「職人作業」を一つひとつ,理屈に当てはめて一般化することである。そういうことを,自作のパンに対して行っている。

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食パンの値段に関する簡単な計算〜パンは自作がお得であるということ〜

農林水産省の政府小麦売り渡し価格値下げについてのブログ記事を書いた(過去記事:小麦の値段は7.1%安くなるのに食パンは〜〜)。

上記の過去記事においては、敢えて小難しく記事を書いた。敢えてである。

簡単に言うと、以下のようになる。

お店で買う食パンの値段は、政府小麦売り渡し価格の14倍以上である。小麦9円が、125円になっている。

一方、自作のパンは小麦粉の値段のみに影響されるので、政府小麦売り渡し価格の4倍以下の値段となる。

パンは、自作する方がお得なのである。

これは、製粉とパン作りの材料費コストの計算から容易に推定できる。

それぞれのコストを25%とすると、以下のような計算になる。

0.25
× 0.25
—————
= 0.0625=6.25%
—————

お米は、自宅で炊く。日本人ならば、当たり前のことである。たくさん食べたいなら、それが最も安い。

パンも同様ということである。

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小麦の値段は7.1%安くなるが,食パンの値段は0.52%しか安くならない農水省の試算について

日本の小麦は約9割が輸入であり,そのほとんど全てを政府が買い付け,製粉会社などに売っている。

これは,かつては食管法というものに基づいていたが,平成6年より,「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいている。

 

小麦の値段については,平成20年〜平成21年(2008〜2009年)にかけて暴騰し,以下のような本が出版されている。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

しかし,実際には,平成22年度以降,小麦価格は安定し,暴騰すること起きていない。さらに,2016年4月からは,政府売り渡し小麦価格が7.1%値下げされることになっている(本ブログ過去記事:政府売り渡し小麦7.1%値下げ見込み〜やった!パンを安く作れる〜)。

本件については,所管官庁である農林水産庁より,プレスリリースがされている。(URL: http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/160309.html )

しかし,農水省の試算においては,小麦売り渡し価格を7.1%下げても,消費者物価指数(CPI)への影響は▲0.006%程度にとどまるとなっている。

加えて,食パンの値段は,1斤(400g)172円が0.9円しか値下がりしないであろと予測している。

上記の農水省のURLに行って,PDF資料を探して読むと,そう書いてある。

小麦の値段を安くすることのCPIへの影響を憂慮しているのは,もちろん「アベノミクス」への配慮からであろう。

農水省の資料は,食パンというものについて多くのことを教えてくれる。いかに,雑記として,幾つかの計算を示す。

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<食パンの値段とは?>

・食パン1斤(400g)の農水省価格 P1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.09

・農水省が示す食パン1斤あたりの小麦代金(殻付き)の割合R1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.16

・食パン1斤(400g)に占める小麦のコストC1の見積もり。

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.27

・2015年10月政府輸入小麦売り渡し平均価格(殻付)P2

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.33

・食パン1斤に含まれる小麦(殻付)の推定重さW1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.39

・農水省資料から推定する製粉割合R2

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.25

この計算は,説明が必要であろう。Rを求める分母は,年間の国内生産麦と輸入小麦の総量である(国内生産小麦70万トン,輸入小麦512万トン,どちらも,農水省資料に基づく)。一方,分子は,農水省が別に示している資料「麦をめぐる事情について(小麦) 政策統括官 平成27年10月(URL:  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/meguji_271005.pdf )に記載されている平成25年度の小麦粉の生産量(4,868千トン)である。

・食パン1斤に含まれる小麦粉の重さの見積もりW2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.51

・食パン1斤(400g)に占める小麦粉の割合R

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.58

・一般的な食パン1斤300gに換算した小麦粉の量W3。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.04

・1斤300gの食パンに占める小麦のコストC2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.11

 

つまり,小麦の原価9円を,100円以上の値段で買っていることになる。

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<1 kgあたりの小麦粉コストの推定>

・農水省が示す小麦粉の小麦コスト割合 R4。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.18

・小麦粉1 kgの材料費C

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.41

・小麦粉1 kgの販売価格の推定値P2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.32

※小麦粉1 kgが¥200以下ならば,その小麦粉は安いということになる。

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このように試算してみると,買うパンは,小麦の政府売り渡し価格の14倍以上になってしまうが,自作するパンは,4倍程度で済むということになる。

時間と心の余裕があれば,「パン」は自作する方が「お得」ということになる。

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発酵種(天然酵母)のパンは,なぜ値段が高いのか?〜考察その1〜

<概要>

発酵種のパン(天然酵母のパン)の販売価格は,一般に高いと考えられている。その理由は,従来,発酵種のパンの製造工程にあると考えらていた。しかし,家庭で作った発酵種のパンには,市販されているパンよりも多くの小麦粉が使われている。そのため,小麦粉の値段を考慮して,発酵種のパンの販売価格を見積もれば,その販売価格は妥当であると考えることができる。

<1.はじめに>

横浜駅西口の地下街を歩いていたら天然酵母パンが売られていた。三分の一カットのパン・ド・カンパーニュが¥250くらいであったろうか?食パンも¥300以上したように思う。

自分でパンを作っている者として,『高い!!』と思った。

しかし,なぜ高いのであろうかとも,思った。

インターネットを使ってパンの文献を検索していたら,少し古いが興味深い文献を見つけた。以下の文献は,CiNiiという学術文献検索サイトからフリー(つまり無料)で閲覧・ダウンロードすることが可能である。リンクを貼ることは容易であるが,あえて,テキストのURLを記載するに留める。著作権への配慮のためである。

・松尾志穂,浜田知子,米田寿子,天然酵母利用パンについての評価,九州女子大学紀要 自然科学編,Vol. 38,No. 2&4, pp. 25-37(2002/03).(http://ci.nii.ac.jp/naid/110004624913)

また,ここで,著者の方々に,「さん」や「様」などの敬称を付していない。これは,学術論文における引用の慣例に従っているまでである。

松尾さんらの上記の文献において,天然酵母利用パンについて,以下の二つのことが評価されている。

(1)天然酵母利用パンを作るパン屋さんと女子大生の天然酵母利用パンに関する意識調査結果。

(2)ドライイースト,ホシノ酵母,レーズン発酵種の発酵力に関する実験およびそれらの酵母を使って作った食パンの評価。

上記(1)の評価において,興味深いのは,パン屋さんも女子大生も「天然酵母利用パン」を「高い」と考えていることである。

一方,上記(2)の酵母の違いによる発酵力に関する実験は,パンを自宅で作っている私のような者には,とても貴重なデータである。簡単に言えば,ドライイーストは速く発酵し,ホシノ酵母やレーズン発酵種はゆっくり発酵が進むというデータである。

このブログ記事を書こうと思った動機は,上記の(1)に関して,「天然酵母利用パン」が「高い」と思われているのは,「なぜか?」と考えたことである。冒頭に記した通り,横浜のパン屋さんの店頭に並んでいた天然酵母パンを,私も「高い!」と思った。

松尾さんらの文献では,天然酵母利用パンが高い理由について,その製造工程にあるのではないかと記しているのであるが,私は,異なる理由を考えている。

私が考える天然酵母利用パン(以降は,私の言い方に改めて,「発酵種のパン」とする),2016年3月12日に焼いた「強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ」を例にして,議論を進めたい。

パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2
パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2

<2.強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパンーニュの仕様について>

2.1材料とその値段

上記の表に加えて,水を160 g(水道水を38°Cに温度調整,加水率61 % 相当)を使っている。水の値段は,ほぼ,無視してよいであろうと考える。

2.2発酵条件,焼成条件

(1)一次発酵:室温(18°C)× 17 h(15:00〜翌朝8:00)

(2)二次発酵:室温(22〜23°C)× 3.5 h(8:15〜11:45)

(3)焼成条件:210°C × 33 min。

2.3 焼成後のパンの重さ

焼成後のパンの重さは690 gであった。食パン1斤は約300 gであるから,2斤相当のパンになったことになる。

強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
焼成後690 g
焼成後690 g

<3.パンの重さと値段の円グラフ>

以下に,パンの材料の重さと値段を円グラフにして示す。

パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ

上記のグラフから,

パンの材料の重さの78.9%,コストの72.6%を小麦粉が占める。

<4.発酵種のパンが高くなる要因に関する仮説>

4.1製造工程にコスト高の要因を認め得ないということ

上に紹介した松尾さんらの文献では,「天然酵母利用パン」(松尾さんらの文献がそう称している)が高い理由について,その製造工程を挙げている。しかし,私が,発酵種のパンを自作していて,パンそのものを作る工程にはコストを高くする要因はないと考えている。

パン屋さんが,発酵種のパンを販売する際に,発酵時間が長いことは,製造工程の制約にはなるであろうが,志賀勝栄さんが,著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』に記している通り,夕方から朝までの時間帯を利用すれば,一次発酵に要する時間の長さ,デメリットにはならない。

 

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

このことは,高橋雅子さんの著書『少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!』において,夜間の冷蔵発酵を推奨していることにも当てはまる。

少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!

4.2発酵種を使用したパンの値段が「日本のパン」の妥当な値段であろうという仮説

4.2.1パンの材料,特に添加物について

私の作っているパンは,志賀勝栄さんの著書に啓発された「リーンなパン」である。上記の材料表の通り,「小麦粉,酵母,塩,および,水」しか使っていない。

一方,松尾さんらの文献において作っているパン(食パンであるが)には強力粉の重さに対して,5 %の砂糖が添加されている。日本において売られているほとんどのパンは加糖されることが当然と考えれている。文献での松尾さんの所属は「九州女子大学 家政学部 栄養学科」となっているから,管理栄養士や栄養士として,食物のプロフェッショナルであろう。その松尾さんらの文献においてさえ,加糖したパンを作っている。

一方,志賀勝栄さんの著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』には,1993年9月にフランスおいて制定された「デクレ・パン」という「パンの法律」について説明がある(34-37頁)。

その法律の紹介の中で重要と志賀さん記しているのが,「パン屋の定義」と「フランスの伝統的なパンの定義」である。志賀さんの著作を引用は避けるが,フランスの法律に関する以下の部分だけ引用させて頂く。

『第二条 「フランスの伝統的なパンの名称,あるいはこれらの名に結びつくような名称で販売できるのは,その形がどのようなものであれ,その製造の過程でどのような冷凍処理もされておらず,いかなる添加物も加えられておらず,以下のような特徴を示す生地の焼成過程からできたパンに限られる。

1.パン製造用小麦粉,飲料水,調理用の塩のみで構成さていること。

2.パン用のイースト(出芽酵母)とデクレの第四条の定義での天然酵母によって,もしくはこれらパンアルコール発酵作用のうちの一方のみによって発酵されていること。

3.場合によっては,小麦粉の総重量に対する以下の上限で,次のものを含むことができる。

a) 2パーセントのそら豆粉,b)0.5パーセントの大豆粉,c)0.3パーセントのモルトパウダー。』

一方,日本において売られいる廉価な食パンには様々な添加物が入っている。例えば,1斤が約¥100で売られている山崎パンの”The Bread”という名称の食パンの原材料は以下のように表記されている。これだけ色々なものが入っていると,フランスでは,「伝統的なフランスのパン」と称することができない。もちろん,食パンはフランスではなくイギリスのパンであるから,それはそれで,構わないであろう。

山崎パン "The Bread"原材料量名
山崎パン ”The Bread”原材料量名

上記の食パンは約¥100で売られているから,その,製造原価を,販売価格のおよそ四分の一以下であろうと推察する。工業製品は,原料費,加工費,人件費,物流費,その他の経費も含めて値段が決まるから,材料費を四分の一程度にしておかないと,作るだけ赤字になってしまう。大きなパンメーカの作るパンは工業製品であるから,当然,その材料費も,同様に考えてよいであろう。

ここで,以下のような見積もりをすることができる。上の食パンに使われている小麦粉の値段である。食パン1斤は約300 gである。食パン中の小麦粉の分量を私のパン・ド・カンパーニュと同等の65%と仮定する。すると,300 gの食パンの中に195 gの小麦粉が使われていなければならない。

小麦粉1 kgの値段を¥245とすると,195 gの小麦粉の値段は,¥47.8となり,食パンの値段の半分になってしまう。これでは,とても,1斤を¥100で販売することは不可能であろう。

別の見積もりも可能である。1斤を¥100で売るために,その材料を四分の一と仮定する。すると,材料費は,¥25である。そのうち,小麦粉のコスト割合を私のパン・ド・カンパーニュと同等の75 %と仮定する。すると,パン1斤¥100の中の小麦粉のコストは,¥18.75となる。小麦粉1 kgが¥245として重さに換算すると,76.5 gである。食パン1斤300 gのうち25.5 %のみが小麦粉であるという計算になる。すなわち,1斤のパンの中には四分の一しか小麦粉が使わていないということになる。

4.2.2 発酵種のパンが高い理由の仮説

上記に示した私のパン・ド・カンパーニュ焼成後の重さ690 gには450 gの小麦粉を使用している。そのコスト割合は72.6 %である。パン1斤に換算すると,小麦粉の値段は,¥46.09となる。パン全体の材料費とすると,¥63.49である。

材料費を四分の一として,販売価格を決めれば,パン1斤を¥253.9とせざるを得ない。これは,冒頭に記した横浜西口の地下街において売られていた天然酵母食パンと同等な値段になる。

発酵種のパンは,添加物が不要なパンである。発酵種のおかげで,発酵中にアミノ酸など複雑な味が醸し出されるからである。添加物を加えてしまっては,それらの微妙な味わいが台無しになる。

しかし,日本の小麦粉が決して安くはない(それでも,米よりは安い:当ブログの過去記事:メモ書き:米と小麦粉の値段の不合理について参照)。

よって,発酵種のパンは,「高い」のではなく,小麦粉のそのものの値段を反映した「妥当な値段」として販売されているに過ぎないと考えられる。

もちろん,発酵種のパンに「付加価値」を上乗せして,一般的なパンよりも高い値段設定されているということは考えられる。しかし,高すぎるパンは,買われないであろうから,需要と供給が釣り合う価格に収束するはずである。

ここに書いたことは,あくまで素人の「仮説」に過ぎない。しかし,家庭で作るパンと工場やパン屋さんが作るパンの小麦粉の値段が倍以上の値段の差があるとは考え難い。このことは,いずれ,別の機会に,記事にする。

<5.まとめ>

発酵種のパンは,一般に「高い=高額』と考えられている。しかし,発酵種のパンは小麦粉の含有量が多い。よって,日本の小麦粉の値段を考慮すると,その値段は,妥当と考えられる。

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メモ書き:米と小麦粉の値段の不合理について

音楽は私の趣味の一つである。

最近,聴くようになったジャンルとしてクラシックとアイルランド音楽がある。クラシックは欧州のキリスト教音楽から発展したものであろうと推察している。そのため,日本人が好んで聴く作曲家の古い時代となるとバッハになるが,バッハのフーガなど宗教的な雰囲気を感じる。

Wikipediaによれば,バッハの生年は1685年である。そうなると,音楽家として活躍したのは,1700年代となり,18世紀ということになる。

一方,まだ,文献等を調べるに至っていないが,アイルランド音楽は17世紀(1600年代)に作曲された曲が,現代でも演奏され続けている。ジャンルの差はあるにしても,アイルランド音楽の歴史は大陸のクラシックと同等以上の歴史を有する。

アイルランド音楽を最も印象的に使っているのが映画「タイタニック」である。タイタニックの中でダンスをするシーンがあるが,そこで流れているのがアイルランド音楽である。

最近,米国シアトル在住のアイリッシュフィドル奏者(回りくどく言うと,アイルランド音楽のヴァイオリン奏者:ヴァイオリン=フィドル)Dale Russという人の演奏をコンサートで聴く機会を得た。そして,CDも購入した。

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アイリッシュフィドル奏者 Dale Russさん (左の女性は日本のアイリッシュフィドル奏者 内藤希花さん

Dale Russはコンサートでは落ち着いた,物静かな方であったが,その心にあるものは,決して静かさだけではないのであろう。購入したCD(彼の最新作である)のタイトルがそれを示している。”SOUL FOOD“というタイトルだ。そのジャケットは以下のようである。

アイルランドのソウルフードとはなにか?このCDジャケットだけで説明は不要であろう。アイルランドでは19世紀末にジャガイモ不作による飢饉が起き,それがきっかけとなって,アイルランドから米国に移民する人が多くいた。タイタニックのレオナルド・ディカプリオはアイルランドから米国に移民しようと考えた一人である。アイルランド音楽は米国音楽のカントリーミュージックなどに大きく影響している。

さて,日本のソウルフードとはなんであろう?

間違いなく,『米』であろう。日本文化が米を基に成り立っていることは,比較文化学者や社会学者や家政学者や農学者の論が不要だ。日本人から米を取り上げたら,何が起きるであろう?

江戸時代末期に米価高騰のため,都市部で打ち壊しなどの暴動が起きているし,もっと昔から,農村では,ずうと,年貢の取り立てに関して,農民一揆が起きている。

戦国時代の名将 甲斐国の武田信玄は,父親に対してクーデタを起こして,領主になるのであるが,そのクーデタに対して,家臣も領民も異議を唱えずに,支持している。未だに,山梨駅には武田信玄像がある。彼が,なぜクーデタを起こしたかというと,作物不作の上に年貢取り立てで,領民が困窮し,それに見かねてのクーデタである。この経緯は,百田基樹著「百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)」(2006/9刊)に詳しく書かれている。

さて,長くなったが,ここまでは,前段であって,ここは,パンのことを書くブログであって,ジャガイモは前置きに過ぎない。

しかし,今回は,パンそのものではなく,メモ書きとして,「米と小麦粉の値段の不合理」について書いておきたいと思う。

昨日(2016年3月8日)に米を5 kg買った。今,就労できていないこともあって,節約できることは,自分が惨めにならない程度に行っている。米もその範囲であって,単に「食べるための米」と割り切っていたので,比較的安い米を買っていた。¥1480/5kgであったであろうか。

その米を数ヶ月(平成27年の新米で)食べていたのであるが,どうしても,美味しくないのである。水加減を調整してみたり,浸す時間を長めにしたりと,炊飯の条件を変えることは試みたが,どうしても,美味しくない。

それで,今回は,少し高い米にしてみた。¥1780/5 kgである。私の出身が茨城県なで,多少の地元愛もあり,選択した。

購入した米5 kg 茨城産コシヒカリ
購入した米5 kg 茨城産コシヒカリ

米を買って,家に帰る道すがら,ふと疑問に思った。「今日買った米,1 kgあたり幾らだ?!」

計算は簡単である。 1 kg あたり¥356である。

¥1,780/5 = ¥356/ kg

2か月前の私なら,何の疑問も持たなかった。米の美味しさは,だいたい値段に比例する。美味しさの代償として,米が高くなるのは仕方がない。そう考えていた。

我が家では私と家内の二人で食べるパンのために一週間あたり2 kgの小麦粉を使う。使っている小麦粉は下の写真のものである。強力粉が¥258/kg,薄力粉が¥158/kgである。ほぼ,同量を一週間で使うから,¥416/2kg = ¥208/kgという計算になる。

昭和産業の強力粉と奥村製粉の薄力粉
昭和産業の強力粉と奥村製粉の薄力粉

単位重さあたり,小麦粉よりも1.5倍以上の高い!

日本において,パンは,主食の一つであっても,ソウルフードではない。日本人が力仕事しようと思うとき,どんぶり飯をかっ喰らわなければ,仕事にならない。

小栗旬さん主演の映画「岳 -ガク-』において,「男飯」という,おそらく,一個1合以上を使った特大「にぎりめし」(おにぎり だとか,おむすび でなく,にぎりめしである)をめぐる話題が映画の重要な導入部になっている。

米と小麦粉の値段は,単に経財原則のみによって決まるものではない。日本の歴史・文化・政治・農学を中心とした科学など様々な糸が,解きほぐせるのであろうかと思うほど複雑に絡み合っている。

しかし,稲作農家でなければ,「買うことによってしか入手できない」ソウルフードである「米」が,輸入品かつ製粉に手間もかかっている真っ白な小麦粉よりも,単位重さあたり,1.5倍も高額であるということは,

日本の食料品全般にわたって高額になってしまっているという,日本が暮らしにくい(少なくとも都市生活者にとっては)社会であることにつながっているように思われて仕方がない。

このことは,日本人が『何を食べさせられているのか?』という,とても重要な問題につながる。それを書き出したら,ブログ1記事どころか,本が2,3冊書けてしまう。

ただ,これだけは,記しておきたい。「なぜ日本の米が高く,そして,生産者である農家の皆さんも,消費者である都市生活者も,幸福感が少ないのか?を真剣に考えるべき時になっている」ということを。
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強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ〜その材料の重さとコスト割合について〜

私は,現在,うつで休職中で,自宅に引きこもり状態である(だいぶ良くはなったが)。

一方,諸所事情があって,家内が単身赴任状態になっている。その家内が,手首を少し痛めていて,包丁を使って固いものを切るのも難儀そうなので,

家内用に「強力粉と薄力粉だけを使ったパン・ド・カンパーニュ」を作っている。

ライ麦粉を入れると少し,固めに焼きあがるためである。

 

強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ 2016/3/5バージョン
強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ 2016/3/5バージョン

以前は,食パンを焼いてスライスして持たせていたが,成形が楽なのと,室温保存し易いので,パン・ド・カンパーニュにしている。

私が作るパンは,毎回何らかの実験要素を含んでおり,似て非なる仕様となる。

2016年3月5日に作った「強力粉と薄力粉だけを使ったパン・ド・カンパーニュ」の仕様は以下の通りだ(過去記事:パンを焼く日(2016年3月6日週のパン5種類)

・強力粉 270 g

・薄力粉  80 g

・食塩 5 g

・リキッド・ルヴァン 63 g

・レーズン発酵種 40 g

・水 144 g(加水率 62 %相当)

・くるみ 約30 g

三月は,我が家は夫婦揃って誕生月である。それで,少し,贅沢をしてクルミ入りのパン・ド・カンパーニュにしてみた。

映画『リトル・フォレスト 夏・秋 』の中で,橋本愛さん演じる いち子 は裏山に落ちているクルミを拾って,殻を割り,実を取り出して料理する。手間はかかっているが,現金は要らない。

しかし,街にいる私に裏山は遠く,スーパーマーケットは近い。交通費を勘案すれば,買ったほうが安い。

パンを作ってから,一体パンの値段がどうなっているのかが気になりだした。それで,検討してみた。

作ってから,クルミ入りのパンがどれほど贅沢なのか,落ち着いて考えてみたくなった。下の表が検討結果である(金額は税別)。

クルミ入り強力粉と薄力粉のパン・ど・カンパーニュ材料の量と費用
クルミ入り強力粉と薄力粉のパン・ど・カンパーニュ材料の量と費用

使ったクルミは160 g入り¥599である。多くは要らなかったので,適量なものを買ったのだが,しかし,1000 gに正規化すると,何と¥3,743もする。何と,高級な食材なことか!

パンの材料費の半分近くが,クルミの値段だ!

グラフを示そう。まず,材料の重さの割合である。データラベルの単位はg(グラム)である。

クルミ入り強力粉と薄力粉の材料の重さ
クルミ入り強力粉と薄力粉の材料の重さ

同様に材料の費用をグラフ化してみた。データラベルの単位は¥(円)である。

クルミ入り強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ材料費
クルミ入り強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ材料費

上の表から明らかなことではあるが,グラフ化してみると,クルミがパンの材料費の半分以上(52 %)を占めている。材料の10 %未満。焼成後の5 %程度なのにである。

また,リキッド・ルヴァンとレーズン発酵種は種起こしおよび種継ぎに使用した材料(小麦粉とレーズン)のそれぞれの重さから材料費にした。レーズン発酵種はリキッド・ルヴァンよりも,少し,高価な発酵種だと考えることができる。

クルミを入れなければ,このパンは,焼成後の重さ約570 g(ほとんど食パン2斤相当)が,¥103である。

週末に家内は,自宅に戻るので,570 gのパンは,朝食用に月曜日〜金曜日に食べるだけであれば,十分な量である(1日に100 g以上=六枚切り食パン二枚相当)。それが,¥103なのであれば,スーパーで袋入りの食パンを買うよりも安価である。

クルミを少し入れたとしても,1斤¥150〜300の袋入りのスライスされた食パンを買うよりも安い。

私のパン作りは,軽量とドウ作り(生地捏ね)に15分,成形に10分(パン・ド・カンパーニュの場合)しか時間をかけない。オーブンを使っている時間は外出はできないが,他のことはできる(例えば映画を見たり,本を読んだり)。

つまり,週末のちょっとの手間でパンを作ることができる。

コスト計算は世知辛いようであるが,現実を知るためと,自分の作り出している価値を知るためには,必要なことであろう(機械屋としては常識ではあるが)。

検討してみて,面白かった。これも,うつが融けてきたという証である(私のもう一つのブログの記事:「うつ が 融けるのを感じること:散歩の姿勢」)

映画『サウンドオブミュージック』の中のパン〜ロールパンのディナーを捨てるお話〜

WOWOWは2月になると米国アカデミー賞特集として,これまでの受賞作品をまとめて放映する。

映画にさほど興味がない私は,今まで気に留めることはなかった。

毎月,WOWOWからは番組紹介の冊子が郵送されてくる。受信料を徴収しておきながら,放送以外ほとんどサービスのないNHKに比べたら,WOWOWのサービス精神は立派であると思っている。

ただ,最近まで,我が家のテレビでWOWOWライブとシネマの予約方法がわからなかった。オンラインの番組表にはWOWOWプライムしか表示されないためである。仕事柄,家電の取扱説明書というのはほとんど読まない。大体,予測が付くからである。

しかし,中には,WOWOWシネマやライブにおいて放映されるプログラムを録画したい場合もある。それで,取説を読んで,それらのプログラムは,録画が日時指定として行えば可能であることを最近知って,随分と先のプログラムを録画予約するようになった。

前置きが長くなったが,そういう方法により,映画『サウンドオブミュージック』を録画視聴した。

3時間もある長い映画なので,4日間に分けて観た。今の私がテレビから出てくる情報量を受け入れることが可能なのは,1日に30分〜1時間程度である。情報量が多すぎて,疲れるのである。それでも,うつのひどい時は,全くテレビを見るということができなかったから,だいぶまともにはなったということになる。

映画の舞台のオーストリアは新婚旅行として行ったところである。ほとんどウィーンで過ごし,一泊二日として,ザルツカンマーグートを経由してザルツブルグに足を伸ばした。もう,23年も前である。

ザルツブルグを半日観光しようと思えば,モーツァルトとサウンドオブミュージックがテーマになる。しかし,私たちは,モーツァルトに少し興味は示したものの,サウンドオブミュージックはほとんど無視した。

新婚旅行をウィーンとしたのは,家内ではなく,私の要望であった。理由は,当時,私の最も興味ある国がオーストリアであったからである。オーストリアというよりも,ハプスブルク家の統治に関心があったというべきであろう。当時,『ハプスブルク家 (講談社現代新書)』という本を読んでいたからである。

今更ながらサウンドオブミュージックを観たのは,ハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー帝国が第一次世界大戦後に崩壊して,共和制となり,第二次世界大戦中,ナチス・ドイツに併合されるが,その頃の雰囲気を感じてみたいと思ったからである。決して,新婚旅行の思い出に浸るためではない。

そして,このブログは,パンのことしか書かないブログである。

映画の中にどんなパンが出てくるのかは,当然ながら,重大な関心事であった。

サウンドオブミュージックの中にパンが出てくるのは,ワンシーンだけである。ジュリー・アンドリュースが演じる主人公マリアがトラップ家に家庭教師としてやってきた当日の夕食のシーンに,「小道具」というか「背景」というか,そんな感じで写っているのに過ぎない。

パンのアップがなかったので判別ができなかったが,ロールパンのように思えた。それも,日本のバターロールというよりも,クロワッサンに近い,しかし,クロワッサンほどバターが多くなさそうなロールパンである。一人に一つずつ皿に置かれていた。

サウンドオブミュージックの時代は,ナチスのオーストリア併合後であるから,1938年以降である。1940年代始めといってもいいかも知れない。

このブログにおいて,『パンの本:武器よさらばーヘミんグウェイ〜(食パンとロールパンおよびプチパン)』という記事を投稿している。『武器よさらば』は第一次世界大戦中,イタリアとオーストリアの戦場が舞台であり,武器よさらばと思った主人公と恋人はイタリアからスイスに亡命し,スイスのロールパンを朝食に食べたいと思いカフェに入るが,永世中立国のスイスにさえ,「戦時中のためロールパン」はなく。「食パン」を食べる。サウンドオブミュージックは武器よさらばよりも,おおよそ25年後のヨーロッパを描いている。

また,ジュリー・アンドリュースが同様に主演したメリー・ポピンズについても,このブログのパンに関わることとして,記事にしている。メリー・ポピンズは,武器よさらばよりも,更に数年前(おおよそサウンドオブミュージックのおおよそ30年前)の第一次世界大戦前の英国ロンドンが舞台であり,その映画に登場するパンはやはり食パンである:過去記事:映画『メリー・ポピンズ』でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以

トラップ一家は,ナチスのオーストリア併合と自らがナチスに拘束されることを嫌って,スイスに亡命する。富も名誉も捨てである(トラップ家の主人はオーストリア軍の大佐である:ナチスに併合されたオーストリア軍は,ナチスに協力して戦争する必要があった)。

奇妙な言い方になるが,戦争中であっても「ロールパン」を食べることが可能な暮らしを捨てて,「食パン」を食べるしかないかない生活を選ぶということである(戦時中,食パンでさえ食べることが可能であったのかという問題は別にして)。

日本において消費されるパンのほとんどは,食パンであるという。

当ブログにおいて,しばしば引用する図書『ウィリアウ・ルーベル著 「パンの歴史 (「食」の図書館)」』はパンに関わる様々な文化について教えてくれる。本の中に以下のような一節がある。
「富裕層と貧困層のパンのちがいを古今共通のひと言であらわせば,貧困層の食べるパンはいつも安い,ということだ。現在,それは大量生産の白パンを意味する」。日本において,大量生産される安いパンとは,どのようなパンのことを指すであろうか。パンを買うと『白いお皿』がもらえるのようなものではないかと考えている。

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酵母の息

私のパンの作り方は,自習である。我流という方が一般的かもしれない。

だいたい,何をするときも,「教わる」ということはなくて,本一冊を基に自習で学ぶというのが私の流儀である。そして,ある時,レクチャーを聴講すると,自習だけでは曖昧であったことの合点が行くということを,ずうっと繰り返している。高校の頃の数学や物理や英語の勉強もそうだったし,就職してから仕事に必要な知識も,ほとんど自習である。

そして,今は,パンを作るのも自習である。そうする理由と背景がないわけではない。私のパン作りは,体調を崩して休職中している療養の一環として始めた。気分障害による体調不良である。放っておくと一日何もせずに過ぎてしまう。そうすると,良いことは考えず,体調は悪い方へ行く。パンを作ろうと思ったのは,パン生地を捏ねるという「単純作業」を夕方にやることで,少しでも,生活のリズムを作ろうと思ったのが,きっかけである。パン作りを習うに行けない状態である。

その気分障害も,だいぶ改善した。睡眠障害は残っているが,気分が落ち込んで,モノゴトを悪い方に考えるようにはならなくなったし,最悪の時期にはできなかった本を読むということもできる。音楽さえ楽しめなかったのであるが,今は,一日中聴いている。時間はかかっているが,体調は良い方法に改善している。

そうやって作っているパンだから,参考にしているレシピ集(志賀勝栄著『酵母から考えるパンづくり』)はあるにしても,それはパン屋さん用のレシピ集であるから,自宅でのパン作りのための雛型にはなっても,材料から焼成までの全ての工程を自分の道具や環境に合わせて調整・工夫をする必要がある。
最も悩ましいのが,一次発酵である。なぜなら,私のパンは発酵する保証がないからだ。

パンを作るためには,材料計量・ドウ作り(生地捏ね),一次発酵,ベンチタイム・成形・二次発酵(クープ入れ)・焼成と各工程を進める。そのうち,人が関われるのは,材料計量・ドウ作り・成形・焼成だけだ。これは,私のパンでは1時間程度しかかからない(過去記事:自分で作って食べるためのパンを考える(その6:所要時間について考える)〜バターロールレシピへの疑問から〜)。発酵は,酵母と環境(主に温度)にお任せするしかない。発酵種だけを使って作るパンでは特にそうだ。

発酵種を使って作るパンの一次発酵は時間がかかる。私の場合は,ドウが発酵したなと,目視によりわかるまで,最短でも12時間を要する。ほとんど,夜間寝ている間に発酵させているから,ずうっと見ているわけではないので,ストレスにはならないが,不安ではある。

しかし,ある時,これが発酵している兆候であろうかと思うようになった。

ドウを発酵させる時に,発酵容器にラップで蓋をした状態にする。そのラップが,時間とともにラップの内側が結露していくのである。

 

DSCN7695
一次発酵開始直後 2016/2/27 15:21

DSCN7698.jpg
一次発酵開始3時間後 2016/2/27 18:21

DSCN7700.jpg
一次発酵開始13時間後 2016/2/28 4:13

DSCN7706
一次発酵開始後 16時間半後 2016/2/28 10:00

写真では判別し難いが,時間の経過とともにラップの内側の結露が多くなる。四角形のプラスチック容器にラベルを貼っている。これは,ドウの区別のためでもあるが,発酵が進むと,結露により,カメラのオートフォーカスが機能しなくなるため,フォーカスロックをする部分をマーキングするためでもある。

この結露の理由について,私はわかっていない。二つの理由が考えられると思っていある。

1.ドウの中の水分が蒸発して結露する。

2.ドウが発酵する際に,アルコールが生成されるが,そのアルコールがドウから蒸発してラップの内側に液滴となる。

おそらく,両方であろうと思う。ドウが発酵する過程では二酸化炭素も生成されるが,二酸化炭素は発酵の温度では気体であるし,水にも容易に溶解するため結露するとは考え難い。

私は,このラップの結露を『酵母の息』と呼んでいる。酵母がドウを発酵してくれている証拠だと信じている。

だから,夕方ドウを作って,寝る前に酵母が息をしていたら,安心して朝を待つことができる。

朝方,ドウが目視で十分に発酵していない(膨らんでいない)ことはしばしばある。上の写真であれば,右下のドウは時間が経っても目立って膨らんではいない。

しかし,そんなドウであっても,成形の工程のために,容器からドウを取り出すと発酵していることは,触感でわかる。

そうやって,焼成まで行ったのが下のパンである(過去記事:パンを焼く日(2016年2月28日週のパン四種類))。

 

DSCN7716
2016年2月28日週のパン

パンとは正しく,発酵食品であると捉えている。

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