『中世のパン』を読んだ記録(なぜパンのレシピは時間に厳格なのかについて)

私は毎週ごとにパンを作ってはいるが,その作り方は,毎週異なる。二つの理由がる。

1.毎週,実験を行っているため(粉量や水および種の量を変えるだけで実験になる。もちろん,焼成条件を変えることであってもである)。

2.発酵具合が毎週ことなる。これは,主に,室温一次発酵をしているためである。温度条件を一定にできないため,発酵はその時次第である。

しかし,一般にパンの作り方(レシピ)は,材料と時間についてかなり厳格である。そのことについて,家庭において作るパンの例に挙げられる「バターロール」を例に疑問を記事にしたことがある(自分で作って食べるためのパンを考える(その6:所要時間について考える)〜バターロールレシピへの疑問から〜)。

パンのレシピがなぜ時間について厳格なのか?,と,いうことについて,私個人としては回答は持っているのであるが,それを,文献として明示してくれているものに出会っていなかった。しかし,やっと,そういう文献(本)を読むことができた。

・フランソワーズ・デポルト著,見崎恵子訳,中世のパン (白水Uブックス),白水Uブックス(2004/10) [単行本は1992/5出版,原著はフランスにおいて1987年出版].

この本は,フランス(地理的には,現代のフランス:中世のフランスは現代のフランスよりかなり狭い)の都市における「パン事情」を歴史学者が書いたものである。扱っている時代は,中世となっているが,一般に,中世後期と呼ばれる12世紀ー16世紀である。時代背景としては,十字軍がほぼ集結し,フランスが英国との百戦戦争をしていた頃である。

章の目次だけ示そう。序,十章の論述,および,結論から構成されている。

・序

・第一章:麦畑から粉挽き場へ

・第二章:パンづくり

・第三章:パン屋の共同体と同職組合

・第四章:フランスパン巡り

・第五章:パンの販売場所

・第六章:なくてはならない市外からパン

・第七章:自家製のパン

・第八章:パンの価格,原則と実際

・第九章:都市の中のパン屋

・第十章:パン消費の数量的評価の困難

・結論

この本は,読みやすい本ではない。

第一に,レイアウトが読みにくい。文字が詰まっているのである。原著が出版された1987年にはPCは未だ一般的なものではなく,大学の研究者もタイプライタを使っていた時代である。そして,日本では,「ワードプレッサ」がやっと一般に使えるようになり始め頃である(一太郎の初期のバージョンの時代である:Microsoft Word日本語版はまだない頃)。その頃の著作であるから,執筆や編集作業の多くは手作業であったであろう。それが,「文字が詰まっている」理由ではないかと推察する。今なら,もっと読みやすいレイアウトになったであろと思う。

第二に,この本は,「フランスの中世」に関する予備知識を,当然ながら必要とする。中世のフランスは,ローマカトリック教会を支える基盤のような土地であった。このころ多くのローマ教皇が「フランス人」である。そのため,当然のように修道院(ヴェネディクト会,クリュニュー派,シトー会など),騎士団(聖堂騎士団=テンプル騎士団,聖ヨハネ騎士団=病院騎士団=ロードス島騎士団),有名なフランス王(フィリップ二世,聖ルイ=ルイ九世,シャルル7世=百年戦争に勝利した王)などが躊躇なく出てくる。

なぜならば,各教会や修道院や騎士団は領地を持っており,自ら小麦を育て・パンを作っていたし,各王は年のパン供給の責任と管理が重要な政治であったからである。

本を読み始めたら,各章にメモ書きしたいことが多く,付箋を付けていたらハリネズミになってしまった。

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この本の結論の書き出しが興味深い。引用させていただく。

「パンは,明らかに,西欧キリスト教世界の物質的・精神的遺産の一つである。フランスにおけるパンの歴史は,いわゆる中世期に始まったものではないし,また一六世紀を持って完結するものでもない。しかし,まさに中世というこの長い時代において,パンづくりに決定的な発展がみられたのであり,パンが国民的伝統として根づいたのもこの時代であった。」

現代のフランスにおいてパンは文化を代表するものである。日本においても,多くのパン店がフランス語の名称を使用している。しかし,著者は,それが中世に戻るといっているのである。それを歴史学的に論述したのがこの本である。

横道にそれるが,塩野七生さんの十字軍物語〈3〉に興味深い記述がある。英国のリチャード一世率いられた第三回十字軍が,現代のシリアの地中海沿岸での「アルスーフの戦闘(1191年9月7日)」に勝利し,戦闘により死んだ馬を焼いて食べる(塩野七生さんは「バーベキュー」と記しているが)ところである。このころ,十字軍への補給はジェノバの船団が,シリア沿岸から行っていたが,補給食糧は日持ちのする「パンやチーズ」が主であった。その上で,死んでしまった馬を焼いて食べるのである。十字軍物語〈3〉から以下を引用させていただく(単行本118ページ)。

「アルスーフの町の広場という広場から,バーベキューの煙が立ちのぼることになってしまったのだ。ピストン輸送による補給で,リチャード軍は水にも食にも不足していなかった。だが,季節はいまだ夏。補給される食はどれも腐敗しにくいパンやチーズで,肉を口にすることなどは,指揮官クラスでもなっかったのである。また,南欧の人ならば魚も多く食するが,北ヨーロッパの男たちとなると,肉を食べないと元気が出ないと思い込んでいる。いつもは鹿でも猪でも食べるのだから,馬の肉でも変わりはなかったのだった。」

肉を食べなければ元気の出なかった北ヨーロッパの男たち(リチャード一世=獅子心王は英国王であるが,十字軍の主体はフランス人であり,最も勇敢=野蛮な聖堂騎士団=テンプル騎士団はフランス人でである)が,十字軍が終わった頃には,パンを中心に考える人々になっていたと読みとれるのである。

さて,「中世のパン」を基に,パンのレシピの時間に戻る。

中世のフランスにおいて(おそらく他国においても),小麦は統制品である。小麦を作るのも,製粉も,販売も領主(王,世俗領主,聖職領主を問わず)に制限を受けていた。

パン屋でさえ,自由に小麦を買えず,領主に指定された市場において購入しなければならなかった。街中で売られている小麦を使ってパンを焼くことさえ「違反」であり,罰金の対象であった。

小麦が統制品であったのは,小麦が十分に多くなかったからであり,パン屋は小麦の在庫を多く持つことさえも制限されていた。つまり,毎日市場に行って,小麦を買い,

「粉挽」,「ふるい掛け」から行っていた(小麦粉は当時売られていなかったようだ)。そして,パンは,毎日,当時の正餐である昼食に間に合うように焼き上げなければならなかった。午前中には,ほとんどのパンを店頭に並べなければならなかったのである。

加えて,当時のフランス都市でも「焼きたてパン」に価値があったようであり,パンを在庫にしておくことも「禁止」だったのだ。

こうなると,パン屋の仕事は,毎日同じ時刻に同じ作業をすることになる。当時の窯は薪を燃やした熾で焼くのであるから,パン生地発酵と窯の準備は並行作業となる。どちらかが,先行しても遅れてもパンはうまく焼けない。

さらに,パンの重さ(値段)は,厳しく当局に監視(監視人が見回っていた)されていたから,いい加減なパンを焼くわけにもいかない。結果的に,パンづくりは時間に対してかなり厳密は作業にならざるを得なかった。それができることが,「パン職人・パン屋の親方」である必要条件であったのである。

パンを焼き上げる時刻の伝統について,志賀勝栄さんの著書パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)という本に,「いまでもヨーロッパに朝5時半にパンを買いに行くという風習がある」(p. 25)という記述がある。「ヨーロッパ」と一般化しているが,主にフランスパリを中心としてであろう。昼食から朝食用になったとはいえ,いまでも,フランスもパン屋は毎日パンを同じ時刻にパンを売れるようにしなければならない。

これが,同じヨーロッパでも,スイスやドイツの田舎に行くと変わる。舟田詠子さんの著書パンの文化史 (講談社学術文庫)207頁に「パンの保存」という表題の節があるが,そこでは田舎の自家製パンは,2,3週間まとめ焼いていた。という解説がある。

そして,「中世のパン」においても,都市外から市場に売りにくる「農家のパン」は貧しい人には便利な「日持ちにするパン」であったと記述されている(文章は変更した。同書 p. 122)。

まとめると,中世のパン「屋」は同じ時刻に焼き上げるためのパンのレシピを運用していたのである。それは,都市住民に安定してパンを供給するためであった。パン屋がストライキをすると,都市住民が植えることにならからである。

パンのレシピが時間に対して「厳格」なのは,このように,焼き上げ時刻の制約がかなり課されていたからであろう。

これは,おそらく,現代のパン屋さんでも同様であろうが,粉挽や薪の扱いが無くなった分,パン屋の仕事は減じたと思われる。

そして,最も言いたいことは,家庭におけるパンづくりは,レシピの時間を厳格に守る必要はないということである。もちろん,夜中や早朝に作業はしたくないから,それなりのスケジュールは必要であるが,生地の具合を見ながら作業ができれば十分であろう。

少なくとも現代日本において家庭でのパンづくりは,時間に厳格なレシピを守って行う必要はないであろうと考える。

 

 

 

パン屋さんになるための本を四冊斜め読みした記録

著者の方には,大変申し訳ないのではあるが,以下の四冊を約2時間で斜め読みした。

その記録。

2時間で読んだので,感想などというものはない。パン屋になるのは,大変だということだけがわかったのみ。

映画『サウンドオブミュージック』の中のパン〜ロールパンのディナーを捨てるお話〜

WOWOWは2月になると米国アカデミー賞特集として,これまでの受賞作品をまとめて放映する。

映画にさほど興味がない私は,今まで気に留めることはなかった。

毎月,WOWOWからは番組紹介の冊子が郵送されてくる。受信料を徴収しておきながら,放送以外ほとんどサービスのないNHKに比べたら,WOWOWのサービス精神は立派であると思っている。

ただ,最近まで,我が家のテレビでWOWOWライブとシネマの予約方法がわからなかった。オンラインの番組表にはWOWOWプライムしか表示されないためである。仕事柄,家電の取扱説明書というのはほとんど読まない。大体,予測が付くからである。

しかし,中には,WOWOWシネマやライブにおいて放映されるプログラムを録画したい場合もある。それで,取説を読んで,それらのプログラムは,録画が日時指定として行えば可能であることを最近知って,随分と先のプログラムを録画予約するようになった。

前置きが長くなったが,そういう方法により,映画『サウンドオブミュージック』を録画視聴した。

3時間もある長い映画なので,4日間に分けて観た。今の私がテレビから出てくる情報量を受け入れることが可能なのは,1日に30分〜1時間程度である。情報量が多すぎて,疲れるのである。それでも,うつのひどい時は,全くテレビを見るということができなかったから,だいぶまともにはなったということになる。

映画の舞台のオーストリアは新婚旅行として行ったところである。ほとんどウィーンで過ごし,一泊二日として,ザルツカンマーグートを経由してザルツブルグに足を伸ばした。もう,23年も前である。

ザルツブルグを半日観光しようと思えば,モーツァルトとサウンドオブミュージックがテーマになる。しかし,私たちは,モーツァルトに少し興味は示したものの,サウンドオブミュージックはほとんど無視した。

新婚旅行をウィーンとしたのは,家内ではなく,私の要望であった。理由は,当時,私の最も興味ある国がオーストリアであったからである。オーストリアというよりも,ハプスブルク家の統治に関心があったというべきであろう。当時,『ハプスブルク家 (講談社現代新書)』という本を読んでいたからである。

今更ながらサウンドオブミュージックを観たのは,ハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー帝国が第一次世界大戦後に崩壊して,共和制となり,第二次世界大戦中,ナチス・ドイツに併合されるが,その頃の雰囲気を感じてみたいと思ったからである。決して,新婚旅行の思い出に浸るためではない。

そして,このブログは,パンのことしか書かないブログである。

映画の中にどんなパンが出てくるのかは,当然ながら,重大な関心事であった。

サウンドオブミュージックの中にパンが出てくるのは,ワンシーンだけである。ジュリー・アンドリュースが演じる主人公マリアがトラップ家に家庭教師としてやってきた当日の夕食のシーンに,「小道具」というか「背景」というか,そんな感じで写っているのに過ぎない。

パンのアップがなかったので判別ができなかったが,ロールパンのように思えた。それも,日本のバターロールというよりも,クロワッサンに近い,しかし,クロワッサンほどバターが多くなさそうなロールパンである。一人に一つずつ皿に置かれていた。

サウンドオブミュージックの時代は,ナチスのオーストリア併合後であるから,1938年以降である。1940年代始めといってもいいかも知れない。

このブログにおいて,『パンの本:武器よさらばーヘミんグウェイ〜(食パンとロールパンおよびプチパン)』という記事を投稿している。『武器よさらば』は第一次世界大戦中,イタリアとオーストリアの戦場が舞台であり,武器よさらばと思った主人公と恋人はイタリアからスイスに亡命し,スイスのロールパンを朝食に食べたいと思いカフェに入るが,永世中立国のスイスにさえ,「戦時中のためロールパン」はなく。「食パン」を食べる。サウンドオブミュージックは武器よさらばよりも,おおよそ25年後のヨーロッパを描いている。

また,ジュリー・アンドリュースが同様に主演したメリー・ポピンズについても,このブログのパンに関わることとして,記事にしている。メリー・ポピンズは,武器よさらばよりも,更に数年前(おおよそサウンドオブミュージックのおおよそ30年前)の第一次世界大戦前の英国ロンドンが舞台であり,その映画に登場するパンはやはり食パンである:過去記事:映画『メリー・ポピンズ』でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以

トラップ一家は,ナチスのオーストリア併合と自らがナチスに拘束されることを嫌って,スイスに亡命する。富も名誉も捨てである(トラップ家の主人はオーストリア軍の大佐である:ナチスに併合されたオーストリア軍は,ナチスに協力して戦争する必要があった)。

奇妙な言い方になるが,戦争中であっても「ロールパン」を食べることが可能な暮らしを捨てて,「食パン」を食べるしかないかない生活を選ぶということである(戦時中,食パンでさえ食べることが可能であったのかという問題は別にして)。

日本において消費されるパンのほとんどは,食パンであるという。

当ブログにおいて,しばしば引用する図書『ウィリアウ・ルーベル著 「パンの歴史 (「食」の図書館)」』はパンに関わる様々な文化について教えてくれる。本の中に以下のような一節がある。
「富裕層と貧困層のパンのちがいを古今共通のひと言であらわせば,貧困層の食べるパンはいつも安い,ということだ。現在,それは大量生産の白パンを意味する」。日本において,大量生産される安いパンとは,どのようなパンのことを指すであろうか。パンを買うと『白いお皿』がもらえるのようなものではないかと考えている。

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映画「メリー・ポピンズ」でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以〜

このPane neroというパンのことしか書かないブログでは,「パンを焼く日」と題した記事を何回か投稿している。

パンを焼く日(その1:2016年2月14日週用のパン)

パンを焼く日(その2:2016年2月21週のパン)

パンを焼く日(2016年2月28日週用のパン)

「パンを焼く日」というのは,意味ありげに感じる方もいるかもしれないが,これは,映画メリー・ポピンズの中において,メリー・ポピンズが家庭教師をつとめる英国ロンドンのBanks家におけるMrs. Banksとメイドの会話中,メイドの台詞にある言葉である。

メリー・ポピンズのパンのことを書く前に,私個人のことを記すと,

私は映画を多く見る方ではない。映画館に行くのは,年に数回である。しかも,お金を払ってみる映画は選り好みが激しい。

まず,暴力シーンの多い映画は観ない(ハリウッドが得意とする映画であるが)。さらに,アニメーションも観ない。スタジオジブリもディズニーもである。加えて,ミュージカル映画も基本的には観ない(最近,傾向は変わりつつあるが)。このような好みであるから,メリー・ポピンズという映画は私の好みではない。だから,今まで観ていなかった。

金を払ってみる気はしない(これは,レンタルであっても)が,2015年の大晦日にNHK BSにて放映があった。ある興味があって,録画をした。

どのような興味かというと,第一次世界大戦前の英国,特に,ロンドンの雰囲気を知りたいと思ったのである。それは,下の一冊の本がきっかけであった。山上 正太郎著 第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫)(2010/1刊)
50歳もとうに過ぎたというのに,恥ずかしいことに,第一次世界大戦のことを,あまりよく知らない。上記の本では,知らないことが多々あった。第一次世界大戦はよく知られているように,オーストリア・ハンガリー連合帝国のは皇太子が,サラエボで暗殺されることをきっかけとして始まるのであるが,それがどのような背景であり,現代にどのような影響しているのかを,ほとんど知らずに来たということである。

第一次世界大戦開戦は1913年である。一方,メリー・ポピンズは1910年のロンドンである。つまり,第一次世界大戦直前,大英帝国が全盛期であった頃のお話である。その頃のロンドンの雰囲気というか,英国人の思うことを感じてみたいと思ったのが,メリー・ポピンズを今更観てみようと思った動機である。

なお,現在に至るまで続く,第一次世界大戦が英国,欧州全体,および,世界全体に与えた影響については,ジョージ・フリードマン著『新・100年予測――ヨーロッパ炎上』(2015/7刊)に詳述されているが,パンのこととは直接関係しない。この本の『読書感想文』は私のもう一つのパン以外のことを書いているブログに記事にしてある(関心を持って頂いたのなら,本を読んで頂くのが最良であるが,時間がないようであれば,稚拙な読書感想文であるが,お読みいただければ幸いである。私のブログ記事:「『新・100年予測(ジョージ・フリードマン著)』を読んだ記録」)

さて,映画メリー・ポピンズにおけるパンの話である。約2時間の映画の中に,パンに関わるシーンは2カ所のみである。

メリー・ポピンズがBanks家の家庭教師となって,一家に騒動が巻き起こる。一家の主人である,Mr. Banksは規律を重要視する銀行役員のジェントルマンである。そして,Mrs. Banksは良き母であり,「女性参政権」を求めて街宣活動する行動的な女性である(1910年時点において,英国でさえ,女性参政権はなかったということになる)。

一つのシーンは,映画の前半,Mr. & Mrs. Banks二人の朝食シーンである。そのテーブルに,現代の日本ではコンビニのサンドイッチ用に使われているような薄いスライスの食パンがコンガリとトーストされて,4,5枚立てて置かれている。サンドイッチ用としたのには理由があって,パンの耳がない状態のトーストである。メリー・ポピンズの中でパンが映るのはそのシーンのみであった。

もう一つのシーンは,コミカルなMrs. Banksとメイドの会話である。銀行役員であるジェントルマンのMr. Banksであるから,メイド二人,家庭教師(メリー・ポピンズ),そして,コックを雇っている。Mrs. Banksは家事をしないらしい。

Mrs. Banksが街宣活動に出かけようとすると,Mr. Banksと一緒に外出していた子供たち二人だけが,煙突掃除のバート(このシーンのときには煙突掃除)に連れられて帰って来る。その日は,メリー・ポピンズの週に一回の休日の火曜日であった。

Mrs. Banksはメイドの一人に,子供たちの面倒を見てくれるように頼むが,メイドは,「私はブラス(真鍮の食器などであろう)を磨かなくてなならないので出来ないと断る」。それでは,Mrs. Banksはコックには頼めないかしら?とメイドに尋ねるが,メイドはそれに対しても,

「今日は『パンを焼く日』なのでコックは忙しくて無理」と答える。

この会話から,Mr. & Mrs. Banksの朝食のテーブルにあったパンはコックが焼いたパンなのであろうと推察できる。

ここで,全く違う観点から,Mr. & Mrs. Banksの朝食のテーブルにあったパンについて考えることもできる。二人の前にあるパンにはなぜ,耳がないトーストであったのか?と,いうことだ。
ウィリアム・アーベル著 『パンの歴史 (「食」の図書館)』(2013/8刊)』という本に,以下の記述がある。

「近代になってだいぶ時間がたってからも,ヨーロッパの上流階級の多くは,出される前にクラストを削ったり,やすりでこそり落としたりしたパンを好んでいた」(pp. 80-81)。

クラストとはパンの皮のことである。大英帝国の上流階級に相当するBanks家でも,クラストのないパンを食べていると推察できる(もちろん,偶々であるかもしれない)。

映画メリー・ポピンズのストーリー上,子守を誰にさせるかというのは,とても重要なシーンなのであるが,朝食のテーブルにあるパンがどんなものであれ,関係はない。バケットがあっても良いし,ロールパンであっても良い。しかし,大英帝国首都ロンドンのジェントルマン(それは,本来の意味のビジネスマンとも同意義であるが)の食卓のパンは,クラストのないパンなのである。

これは,私がメリー・ポピンズを観ようと思った動機に正しく合致する,大英帝国全盛期のロンドンがどんな風であったのかを示してくれている。

繰り返しになるが,私が,『パンを焼く日』という題名の記事を書くようになったのは,これがきっかけである。そうでなければ,単に,「今週のパン」だけで良い。

しかし,なぜ,Banks家のパンは食パンであったのであろう?それは,ジュリー・アンドリュースが主演したもう一つの映画「サウンドオブミュージック」と比較してみると,朧気げに理解できるのであるが,「サウンドオブミュージック」は,まさに,ここ数日で観ている(ミュージカル映画なので,今まで観ていなかった=なんと教養のないことか!)ので,またの機会に記事にしたいと思う。

パンを作りながら,こんなことも考えていたりする。なお,ヘッダーにある写真は私のパンのブログの過去記事:リーンなパンはトースタで炙っても焦げないに使用した写真を転用したものである。著作権の関係上,メリー・ポピンズのシーンを使うわけにはいかないのである。

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自分で作って食べるためのパンを考える(その5:二次発酵・焼成)〜バターロールレシピへの疑問から〜

この記事にはその1〜4までの過去記事があります。

自分で作って食べるためのパンを考える(その1:材料)〜バターロールレシピへの疑問から〜

自分で作って食べるためのパンを考える(その2:ドウ作り=生地捏ね)〜バターロールレシピへの疑問から〜

自分で作って食べるためのパンを考える(その3:一次発酵)〜バターロールレシピへの疑問から〜

自分で作って食べるためのパンを考える(その4:ベンチタイム・成形)〜バターロールレシピへの疑問から〜

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私の見ているバターロールのレシピには,二次発酵と焼成について,以下のように記載されている。

・(成形した生地を)天板に並べ,38°C位の場所で生地が乾かないようにして約40分間発酵させる。

・表面に溶き卵薄く塗り,210°Cのオーブンで9〜14分間焼く。

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この記載を見たら,自宅でパンなんか作りたくなくなる。それほど,いじめに近いレシピだ。以下に不親切かを列挙する。

1.(成形した生地を)天板に並べることの無意味さ:恐らく,このレシピを書いた人は,パン屋さんの天板をイメージしている。パン屋さんのオーブンであれば,冷えた金属板に生地を並べても十分に予熱したオーブンを使ってパンを焼くことができる。しかし,家庭用オーブンを使ってパンを焼く際に,オーブンの予熱に要する熱は,天板を暖めることに多くが使われるはずである。だから,パンのレシピ本を見れば,天板も一緒に予熱するように描かれている(例えば,高橋雅子さんの『ゆっくり発酵 バゲット&リュスティック (少しのイーストでつくるパン3)』

熱力学的に考えても,予熱したオーブンに熱容量の大きな天板(一般には鋼にホウロウ加工がされている)を入れることは,エネルギーの無駄でしかない。

パン作りに詳しい人なら,そのため,パン作りをしている人の間では,『パンをサクッと焼く魔法の銅板』なるものが使われているらしい。銅板を使わずとも,オーブンシートを使うのは常識である。

一方,私は,金属材料の機械的性質と熱的性質および科学的性質を考慮するれば,銅板ではなくアルミプレート(アルミは銅より安い)の使用で十分だと考えており,当ブログにそのような投稿もしている(過去記事:『アルミプレートをオーブンシート・銅板・スリップピールの代用にすること(その3)』)。

エスコ 300x300x2.0mmアルミ板 EA441VC-21

すなわち,二次発酵をさせる方法自体が,パン作り初心者のためのレシピではない。

2.二次発酵温度38°Cの環境を家庭においてどのように作るかという課題:オーブン機能付き電子レンジの発酵機能を利用すれば,38°Cの温度環境を作れる。我が家の電子レンジの発酵温度は30°Cと40°Cになっている。しかし,それでは,40分も電子レンジが使えないことになる!!また,一般にホイロと呼ばれる発酵器 を利用しても可能であろうが,いずれにせよ,電気代なり機材の費用がかかることになる。こういうことを称して,私は「いじめ」と呼んでいる。

3.生地が乾かないようにすることの意味は?:これは作ろうとするパンのコンセプトに依存するのであるが,志賀勝栄さんの著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』230頁によると,二次発酵(最終発酵)は生地を休ませることと表面を乾かすことだという。
私が作るパンは油脂や卵を入れていないパンばかりであるが,確かに,二次発酵において表面を乾かした方が,クープが入れやすい。バターロールはクープを入れないパンであるから,比較することの意味があるのかとも思うが,敢えて難しいことを記載しているように思われて仕方がない。

4.焼成時間の範囲が9〜14分と幅が大きいこと:オーブンの温度は210°Cと厳格に仕様を規定しているのに対して,焼成時間は幅が広い。9分焼いてみて,そのあと少しづつ時間を延ばせという風に理解できる。しかし,問題なのは,我が家のオーブン(三菱電機製)は,オーブンの窓から中の焼き具合がよく見えないことだ。ふくらんだがどうかはわかるが,焼き色までは窓から覗き見るのではわからない。よって,細切れに時間を延ばしたらその度に,オーブンのドアを開けなければならない。

レシピを書いた人からすれば,何度かやって,自分のオーブンに合った焼き時間を決めろということかもしれないが,そうであれば,あらかじめ「10分くらいを目安にオーブンによって調整しろ」と書けば良い。わざわざ,9〜14分と仕様を決めることは不要だ。

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私のプチパンの二次発酵から焼成の例

二次発酵に「布取り」と言われる帆布を使う手法を使っている。帆布はパンマットなどと呼ばれて,製パン用品として売られている。

しかし,ユザワヤなども手芸用の帆布が購入可能である。例えば,アマゾンで探すと,以下のようなものが見つかる。

帆布 6号 生成り 極厚 カット単位 1m 連続カット

二次発酵開始 2016/2/18 13:45
二次発酵開始 2016/2/18 13:45
二次発酵終了 2016/2/18 15:37
二次発酵終了 2016/2/18 15:37
アルミプレートに生地を移す 2016/2/18 15:38
アルミプレートに生地を移す 2016/2/18 15:38
クープ入れ完了 2016/2/18 15:41
クープ入れ完了 2016/2/18 15:41
焼成完了 2016/2/18 16:15
焼成完了 2016/2/18 16:15

※焼成時間は23分であったが,オーブンの予熱調整のため,オーブンに生地を入れるの少し遅くなり,クープ入れから焼成完了まで,少し時間をロスしている。

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繰り返しすが,バターロールの参考レシピは,パン作り初心者にとっても,とても難しいものであると考える。その1〜その5によりパンの工程を全てを書くことができた。

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リーンなパン(その52:薄力粉のプチパン・レーズン発酵種を使用)

<1.はじめに>

薄力粉(奥村製粉 Star Select=川越市に本社があるスパーチェーン ヤオコー PB)だけを使ってパンを作ってみた。酵母としてはレーズン発酵種を使用した。

私のブログでは,材料を全て開示しているが,2.の動機が長文となったので,材料についての考え方について,後日,別の記事を投稿したいと考えている。

<2.薄力粉だけでパンを作ってみようとした動機>

(1)私がパン作りに没頭し始めたのは,志賀勝栄さんの『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』を2015年9月に偶々読んでからである。
しかし,実は,それより3ヶ月ほど前に,体調を崩して休職していて,少し退屈し始めた頃,家にある粉が薄力粉だけでパンができないであろうかと,何回か試みたが,もちろん,なんの知識もないのであるから,全て失敗した。

(2)橋本愛さん主演の映画にリトル・フォレストという作品がある。東北地方のある村の中の店もない小さな集落において,橋本愛さんが演じる「いち子」(この映画の登場人物には全て姓がなく,名のみである)が,一人で自給自足のような暮らしをする姿を描いた映画である。『夏・秋編』と『冬・春編』がある。『夏・秋編』の方が先に公開された。
彼女は自分で米や野菜を育て,美味しそうな料理を作る。だから,映画は,いち子が作る料理を集めて,全体のストーリーになっている。

6月。雨の中での田んぼの草取りに疲れたいち子が服を乾かそうと,初夏にもかかわらず薪ストーブを燃やす。その火を勿体ないと思ったいち子は,パンを作る。地粉で作るパンである。

橋本愛さんについては,2013年度上期のNHK 連続ドラマ小説『あまちゃん』を観て以来,ファンになった。映画の告知を聞くと,『あまちゃん』と同時並行して,同じ岩手県において撮影していたらしい。それは,劇場で観るしかないと,当然,観た。2014年のことだ。その頃は,パンを自分が作ることになるなどとは思ってもみなかった。

リトル・フォレストが2016年1月末と2月初めにWOWOWにおいて放映された。パン作りとは関係なく,劇場で見落とした細部を見直そうとして,再び観た。パンを作るのは覚えていた。しかし,いち子が地粉を使っているのは,失念していた。いち子は,郵便屋さんが届ける郵便が,「また請求書だけ?」というような生活をしている。地粉だから,近所の農家から分けてもらったものであろう。うどんやすいとんを作るための小麦粉である。その地粉を使って,見事にパンを作る。クープも慣れた手つきで入れる。

WOWOWの放映を観て,『そっか,地粉を使ってパンができるんだ!!』と,私は喜んだ!そして,2015年の薄力粉を使ってパンを作った失敗を思い出した。

地粉を使ってパンができるのであれば,薄力粉だけを使用してパンができないわけがない,と,単純に考える。

ちょうど,発酵種を使い切る時期でもあった。このような動機により,薄力粉だけを使用してパンを作ってみようと考えた。これが,動機である。

<2.材料>

薄力粉:200 g。

食塩:3 g

酵母:レーズン発酵種

酵母の量と加水については,またの機会に記事を投稿したいと考えている。

捏ねたドウは下の写真のようになった。

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薄力粉100%から作ったドウ 2016/2/22 19:04

<3.一次発酵>室温(16〜17°C)×約18 h。

DSCN7654
一次発酵開始 2016/2/22 19:06
DSCN7655
一次発酵途中 2016/2/23 7:13
一次発酵終了 2016/2/23 13:07
一次発酵終了 2016/2/23 13:07

<4.成形・二次発酵>プチパンに成形し,室温(約20°C)×約2 h二次発酵させた。

プチパン用に分割しベンチタイム 2016/2/23 13:12
プチパン用に分割しベンチタイム 2016/2/23 13:12
二次発酵開始 2016/2/23 13:38
二次発酵開始 2016/2/23 13:38

<5.焼成条件・結果>

焼成条件:230°C×23 min

結果は以下の写真のようになった。かなり,釜伸びが起きた。

薄力粉100%のパン焼成結果
薄力粉100%のパン焼成結果

もちろん,アルミプレートを使用したが,裏は以下のような焦げ具合。

薄力粉100%のパンのアルミプレートとの接触部分
薄力粉100%のパンのアルミプレートとの接触部分

少し冷えたところで,クラムを見たくなり,一つを切断した。食してみたが,クラストはしっかりと歯ごたえがあり,クラムは柔らかいパンになった。

薄力粉100%のパン切断面
薄力粉100%のパン切断面

<6.まとめ>

薄力粉100%のパンを作ることができた。思ったよりも良い具合にできたと考えている。これを機会に,薄力粉パンの我が家の定番メニュー化を目指す。

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パンを焼く日(その2−1:2016年2月21日週用のパン)

パンを三つも焼く日には,オーブンを無駄なく使いたい。そのためには,その日の作業工程を設計する必要がある。

工程設計というと難しい言い方をしているが,これは,職業柄くるためで,メモ書きが必要であるという意味である。

こんな簡単なものだ。

DSCN7604
2016/2/20 作業の計画書

オーブンの予熱を始めたら冷やすようなことはしたくない。電気代の無駄になるからだ。

だから,一気に焼きの工程を進める。

生地によって二次発酵時間が異なる。また,パンによって焼く温度も異なる。できれば,高い温度において焼くパンを先に焼いてしまって,低い温度を後にしたい。その方が,オーブンの予熱は楽になるはずだ(これはあくまで推定でしかないが)。

舟田詠子さんの著書,パンの文化史 (講談社学術文庫)(2013/12)には,スイスだったかドイツだったかの村において,パン焼き窯が,村で共同で使っていた頃まで,窯を管理する村の役人がいて,複数の人が1日にパンを焼こうとする場合には,くじ引きで公正を期していたと紹介されている。当時のパン焼き窯は薪を使う窯だから,最初の人は薪を多く使わないと窯を温めることができない。一方,窯はすでに暖かいから,順番の遅い人は薪の量を減らすことができる。折角集めた薪を使う量は少なくしたいのは,家庭の光熱費を気にする現代人と変わらない。だから,公正にくじ引きをしたのだという。

工程設計は,機械屋の得意とするところである。
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自分で作って食べるためのパンを考える(その2:ドウ作り=生地捏ね)〜バターロールレシピへの疑問から〜

自分で作って食べるためのパンを考える。その2。ドウ作り=生地捏ねについて

過去記事

自分で作って食べるためのパンを考える(その1:材料)〜バターロールレシピへの疑問から〜

バターロール 私のパン実例
・ボウルの小麦粉+ドライイースト+砂糖+食塩入れて軽く混ぜる=A:この段階で加水は未である。

・Aに卵,牛乳,水を加え混ぜあわせる=B。

・生地がまとまってきたらバターを加えてよくこねる。

・生地がベタつかなくなったら台の上に取り出し,たたきつけ,折り込みながら150〜200回こねる。〜こねる時間の目安は15〜20分間が目安である。

 

・ボウルに全ての材料を入れる=65%加水率程度なら全て。

・ボウルに手を入れ,全体を反時計回りに数回ぐるぐる回す(私は右気なので反時計回り)=この段階でグルテンの粘りが表れ,生地はまとまってくる。

・生地に粘りが出てきたら,右から左に折りたたみ力を入れて押す。そして,その生地を伸ばす。これを繰り返す。時々前後にも伸ばして折りたたむ。この折り返す回数を数える。

※この折りたたむというのは,元になる本がある。戸田盛和著,カオス―混沌の中の法則 (New science age),岩波書店(1991/10)

この本の46〜48ページにパイこねを数学的に扱うとどういうことになるのか?ということが記載されている。私が折りたたんでは伸ばすというのは,そのことを実践しているのに過ぎない。

経験的には,バケットでは折りたたむのは15回程度,下の写真では200回。

写真二枚の時刻に着目いただきたい。

材料を計量し終わった状態からドウの一次発酵に移る手前までの時間は8分である。

DSCN7539
パンの材料を捏ねる前:2016/2/17 20:12
DSCN7540
生地捏ねが完了した状態(一次発酵に移る直前):2016/2/17 20:20バターロールのドウ作り(ドウとは小麦粉を水で練ったものの総称:パン生地もお好み焼きの生地も天ぷらの衣も全てドウである:舟田詠子著,パンの文化史 (講談社学術文庫)(2013/12)を参照願いたい)において,力学的に不思議な工程がある。

 

*『生地がベタつかなくなったら台の上に取り出し,たたきつけ』の部分の『たたきつけ』である。

なぜ,たたきつけるという乱暴な作業が必要なのであろうか?折角できたグルテンが壊れなりしないのであろうか?

もったいぶっても仕方ないので,私の推論を提示する。このブログ記事を偶々お読み頂いた方が,私の推論が間違いであることをご存知であれば,是非,コメントなどにより,ご指摘をお願いしたい。

パン生地をたたきつける理由の私の推論:バターロールのドウには,水と卵と牛乳とバターが入っている。卵は水に溶ける(天ぷらの衣やお好み焼きの生地)。水と牛乳も混ざり合う(パンケーキの生地)。一方,水とバターは混ぜただけでは溶け合わない。理由はバターは油脂類であり,エステル基(新化学化学基礎+化学 (チャート式・シリーズ)の444〜446頁参照=平成26年4月1日版)を持つ。エステル基は水分子を弾く。

混じり合わないものを混ぜて発酵するようにドウにしようとするのであるから,何らかの工夫が要る。恐らくであるが,バターと小麦粉と水に衝撃力を加えて,外力により強制的に混ざり合わせる作業が『たたきつけ』というものであろう。

パン捏ね台とパン生地では,生地の方が柔らかい。生地に勢いをつけて(速度をつけて)台に叩きつけると衝撃力が発生するが,柔らかい生地の変形が大きなる。

逆の例を示そう。大きな隕石が大気中において燃え尽きずに地表面に落下するとクレータを作ることはよく知られている。月には大気がないため,無数のクレータがある。これは,隕石よりも地表面や月面の方が柔らかいために,地面の方が変形するだけでは止まらずに,地面をえぐり出して・撒き散らす。それがクレータである。その逆のことが,ロールパン生地作りの『たたきつけ』ではないかと推察する。

たたきつけることによって,バターはより小さな塊となって,グルテンの膜の中に入り込んでいく。グルテンの中に入れば,小麦と水とバターは同じ部屋で同居できる。

なお,バターロールの生地を作るレシピに記載がないのであるが,パン生地作りにはぬるま湯を使うことが多い。イーストが発酵し易くするためである。私はドライイーストはあまり使わないが,水は,ぬるま湯を使う。しかし,バターロールのレシピ通り15〜20分も捏ねていたら,折角のぬるま湯も冷めてしまう。

バターロールのドウの作り方だけを読んだら,パンなんか作りたいと思わないはずだ。

しかし,志賀勝栄著,『酵母から考えるパンづくり』(2007/04)高橋雅子著,『少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!』(2007/1)にはドウを作るときに,乱暴な『たたきつける』ようなことは,一切記載されていない。それどころか,可能な限り丁寧に扱うようにと記載されている。

 

強力粉の袋に記載されているバターロールのレシピは,パンを自力で作る人を増やしたくないための煙幕ではないかと思いたくなる。

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自分で作って食べるためのパンを考える(その1:材料)〜バターロールレシピへの疑問から〜

パン用に強力粉をスーパーで買うと,必ず,袋の裏にバターロールのレシピが印刷されている。高い小麦粉には,書かれていないのは,知っている。

そのレシピを見ると,パン作りは敢えて『難しい』と思わせたいのではないかと思えて仕方がない。

パンを作り出して(焼いてとは言わない)半年しか経っていないが,少なくとも,自宅で食べるパンは幾つか定番ができた。そのことも,いずれ記事にしたいが,その前に,バターロールレシピへの疑問を提示したくなった。

そのためには,自分が作っているパンと比較するのが最も簡単であると考えた。

長い記事になりそうなので,分割して,まずは,材料から。

バターロール材料 私のパン材料実績例:水なし・塩なしパン(2016/2/18)
材料A

強力粉:300 g

ドライイースト:6 g

砂糖:30 g!!

食塩 3g

バターロール材料Aに相当するモノ

強力粉:150 g

薄力粉:50 g

ルヴァン種:52 g

レーズン発酵種:30 g

りんご発酵種:70 g

材料B

卵(Mサイズ):1個(50g)

牛乳:30 ml

水:110 ml

バターロール材料Bに相当するモノ

※無し。

分量外

バター:30 g

卵(つや出し用):適宜

 バターロール材料の分量外に相当するモノ

※無し。

私のパンの実績例の材料計量の様子。日時を付記した。13分で材料準備が完了した。米の炊飯に例えれば,米の量を計る時間に相当する。

一方,バターロールの材料全てを計量をしたら何分かかるであろう?

DSCN7578
2016/2/17に使った粉の未開封のもの
DSCN7532.jpg
強力粉250 g計量 2016/2/17 19:59
DSCN7533.jpg
薄力粉計量 2016/2/17 20:00
DSCN7535
ルヴァン種(リキッドルヴァン)計量 2016/2/17 20:05
DSCN7536,jpg
リキッドルヴァンの計量結果
DSCN7537.jpg
レーズン発酵種の計量 2016/2/17 20:07
DSCN7538.jpg
りんご発酵種の計量 2016/2/7 20:09
DSCN7539
材料全て

バターロールの材料を集めることを考えると,イジメとしか思えない。と,いっても,私も,以下の二冊の本に出会わなければ,自分でパンを作ろうなどとは,思いもしなかったのではあるが。


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リーンなパン(その51:発酵種水分のみのパン〜無塩プチパン試作2〜 )

パンの仕様:中種をそのまま焼いたパンとなる。

1.材料

・強力粉:150 g (昭和産業 強力粉 カナダ産小麦 一等粉)。

・薄力粉: 50 g  (奥村製粉 薄力粉 STAR SELECT ブランド 原産地不明 一等粉)。

・ルヴァン種(リキッドルヴァン):52 g

・レーズン発酵種(液):30 g

・りんご発酵種(液):70 g

・食塩:無し。

・水:無し。

※発酵種の水分のみにより加水率:63.6 %相当。

DSCN7539

2.一次発酵:室温(約16 °C)× 約17 h。

DSCN7541
一次発酵開始 2016/2/18 20:21
DSCN7559
一次発酵終了 2016/2/18 13:19

3.二次発酵:室温(約23 °C)× 約 2 h。

DSCN7563
二次発酵開始 2016/2/18 13:45
DSCN7565
二次発酵終了 2016/2/18 15:38

4.焼成条件:230 °C× 23 min。

DSCN7566
クープ入れ直後 2016/2/18 15:41
DSCN7570
焼成終了 2016/2/18 16:15

※このパンについては,今後,数回に分けて,各工程の記事を投稿する考えである。

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