パン作り(設計)において,小麦粉の量(重さ)に対しする酵母の量と水の量は,最も重要なパラメータであると考える。ドライイーストを使用してパンを作る場合には,粉の量に対する水の量(加水)の割合(加水率)のみを定めれば,出来上がるパンの特徴は大凡決まる。
一方,発酵種を使用してパンを作る場合においては,発酵種が含有する水分の量を加水率に考慮する必要がある。
私は,レーズン発酵種を液種のまま使用しており,その場合,粉に混ぜる発酵種はほとんど水分とみなせると考え,加水率の一部としている。


しかし,小麦粉を水により練った上で発酵させるルヴァン種,特に,リキッド・ルヴァンにおいて,その水分をどのように考えるべきは,一考を要する。
ライ麦粉を発酵させて作るサワー種の水分を加水率に反映することについては,志賀勝栄著「酵母から考えるパンづくり」pp.128-131.に紹介されているファインブロートのレシピにおいて,「サワー種の半量をライ麦粉として計算する。」ということが記載されている(同書p.130)。
一方,同書において,ドウ(小麦粉を水で練ったものの総称)を発酵させる老麺を使ったエーデルというパンについては,老麺の含有する粉量と水分をどのように考えるべきかの記載はない。これは,ファインブロートに使うサワー種は粉量に対して40%であるが,老麺を使う量が粉量の5%と小さいということも関係しているであろう。
しかしながら,家庭において作るパンでは,粉量が多くても精々400〜500 g程度である(パン・ド・カンパーニュを二次発酵させる直径約20 cmの発酵籠では粉量400〜450 g程度,1.5斤の角パン型の場合では粉量500 g程度である)。よって,リキッド・ルヴァンをどの程度粉に混ぜるかにもよるが,私が作るパンの場合に限定するれば,粉量の10 %程度は使用するため,リキッド・ルヴァンが含有する水分を加水率をどのように反映するかは,パンを設計する上で,非常に重要である。
結論を先に示す。私の場合は,リキッド・ルヴァンを起こす際(当ブログの 「少量のルヴァン種(リキッド・ルヴァン)を起こす」 などの過去記事を参照されたい)に,粉に混ぜる水の量の割合をリキッド・ルヴァンの含水率として,パンを設計する際の加水率に反映させている。
この結論に至るまでには,試行錯誤を繰り返している。
例えば,2016年2月14日に焼いたパン・ド・カンパーニュは加水率を65%として設計したが,リキッド・ルヴァンの水分を加水率に加えなかった。焼きあがったパンは以下のようになった。生地を捏ねてる時点において,緩い感じがあった。その通り,パンが上に釜伸びせず,平べったい形となった。水が多かったためであろう。

一方,2016年2月28に焼いたパン・ド・カンパーニュは加水率を62%として設計した。以下のような材料である。
・強力粉:300 g
・薄力粉:100 g
・ライ麦粉:50 g
・ルヴァン種(リキッドルヴァン):40 g
・レーズン発酵種:27 g
・りんご発酵種:34 g
・食塩:6.2 g
・水: 207 g(加水率62 %相当に調整)
粉量は450 gである。水は207 gであるから,見かけの加水率は207/450=0.46=46 %となる。しかし,レーズン発酵種とりんご発酵種をそれぞれ,27 gと34 gを加えていて,それを加水率に反映すると,(207+27+34)/450=0.60=60 %となる。
加えて,リキッド・ルヴァンを40 gを加えている。リキッド・ルヴァンを起こす,および,種継ぎする際には,粉と水の割合を1:1.1としているため,その含水量を,
40×1.1/(1+1.1)=21 g
と見積もることができる。これを,加水率に反映すると,
(207+27+34+21)/450 = 0.64 = 64 %となる(加水率62 %として設計したのだが,計量の段階で計算を間違えた)。
焼きあがったパンは以下の通りであるが,上のものより,上に釜伸びしている。加水率が少ない証である。

それでは,リキッド・ルヴァンの粉と水の割合の1:1.1をどのように決めたかであるが,それは,単に志賀勝栄著「酵母から考えるパンづくり」p.17に紹介されている配合を真似したに過ぎない。
種継ぎの場合においても,それを厳密に守っている。このことにより,次回パンを作る際にリキッド・ルヴァンの水分を加水率に反映し易くなる。



以上が,私が,我流によりリキッド・ルヴァンを使う際に,加水率との関係について留意するようになった事項である。
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