『中世のパン』を読んだ記録(なぜパンのレシピは時間に厳格なのかについて)

私は毎週ごとにパンを作ってはいるが,その作り方は,毎週異なる。二つの理由がる。

1.毎週,実験を行っているため(粉量や水および種の量を変えるだけで実験になる。もちろん,焼成条件を変えることであってもである)。

2.発酵具合が毎週ことなる。これは,主に,室温一次発酵をしているためである。温度条件を一定にできないため,発酵はその時次第である。

しかし,一般にパンの作り方(レシピ)は,材料と時間についてかなり厳格である。そのことについて,家庭において作るパンの例に挙げられる「バターロール」を例に疑問を記事にしたことがある(自分で作って食べるためのパンを考える(その6:所要時間について考える)〜バターロールレシピへの疑問から〜)。

パンのレシピがなぜ時間について厳格なのか?,と,いうことについて,私個人としては回答は持っているのであるが,それを,文献として明示してくれているものに出会っていなかった。しかし,やっと,そういう文献(本)を読むことができた。

・フランソワーズ・デポルト著,見崎恵子訳,中世のパン (白水Uブックス),白水Uブックス(2004/10) [単行本は1992/5出版,原著はフランスにおいて1987年出版].

この本は,フランス(地理的には,現代のフランス:中世のフランスは現代のフランスよりかなり狭い)の都市における「パン事情」を歴史学者が書いたものである。扱っている時代は,中世となっているが,一般に,中世後期と呼ばれる12世紀ー16世紀である。時代背景としては,十字軍がほぼ集結し,フランスが英国との百戦戦争をしていた頃である。

章の目次だけ示そう。序,十章の論述,および,結論から構成されている。

・序

・第一章:麦畑から粉挽き場へ

・第二章:パンづくり

・第三章:パン屋の共同体と同職組合

・第四章:フランスパン巡り

・第五章:パンの販売場所

・第六章:なくてはならない市外からパン

・第七章:自家製のパン

・第八章:パンの価格,原則と実際

・第九章:都市の中のパン屋

・第十章:パン消費の数量的評価の困難

・結論

この本は,読みやすい本ではない。

第一に,レイアウトが読みにくい。文字が詰まっているのである。原著が出版された1987年にはPCは未だ一般的なものではなく,大学の研究者もタイプライタを使っていた時代である。そして,日本では,「ワードプレッサ」がやっと一般に使えるようになり始め頃である(一太郎の初期のバージョンの時代である:Microsoft Word日本語版はまだない頃)。その頃の著作であるから,執筆や編集作業の多くは手作業であったであろう。それが,「文字が詰まっている」理由ではないかと推察する。今なら,もっと読みやすいレイアウトになったであろと思う。

第二に,この本は,「フランスの中世」に関する予備知識を,当然ながら必要とする。中世のフランスは,ローマカトリック教会を支える基盤のような土地であった。このころ多くのローマ教皇が「フランス人」である。そのため,当然のように修道院(ヴェネディクト会,クリュニュー派,シトー会など),騎士団(聖堂騎士団=テンプル騎士団,聖ヨハネ騎士団=病院騎士団=ロードス島騎士団),有名なフランス王(フィリップ二世,聖ルイ=ルイ九世,シャルル7世=百年戦争に勝利した王)などが躊躇なく出てくる。

なぜならば,各教会や修道院や騎士団は領地を持っており,自ら小麦を育て・パンを作っていたし,各王は年のパン供給の責任と管理が重要な政治であったからである。

本を読み始めたら,各章にメモ書きしたいことが多く,付箋を付けていたらハリネズミになってしまった。

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この本の結論の書き出しが興味深い。引用させていただく。

「パンは,明らかに,西欧キリスト教世界の物質的・精神的遺産の一つである。フランスにおけるパンの歴史は,いわゆる中世期に始まったものではないし,また一六世紀を持って完結するものでもない。しかし,まさに中世というこの長い時代において,パンづくりに決定的な発展がみられたのであり,パンが国民的伝統として根づいたのもこの時代であった。」

現代のフランスにおいてパンは文化を代表するものである。日本においても,多くのパン店がフランス語の名称を使用している。しかし,著者は,それが中世に戻るといっているのである。それを歴史学的に論述したのがこの本である。

横道にそれるが,塩野七生さんの十字軍物語〈3〉に興味深い記述がある。英国のリチャード一世率いられた第三回十字軍が,現代のシリアの地中海沿岸での「アルスーフの戦闘(1191年9月7日)」に勝利し,戦闘により死んだ馬を焼いて食べる(塩野七生さんは「バーベキュー」と記しているが)ところである。このころ,十字軍への補給はジェノバの船団が,シリア沿岸から行っていたが,補給食糧は日持ちのする「パンやチーズ」が主であった。その上で,死んでしまった馬を焼いて食べるのである。十字軍物語〈3〉から以下を引用させていただく(単行本118ページ)。

「アルスーフの町の広場という広場から,バーベキューの煙が立ちのぼることになってしまったのだ。ピストン輸送による補給で,リチャード軍は水にも食にも不足していなかった。だが,季節はいまだ夏。補給される食はどれも腐敗しにくいパンやチーズで,肉を口にすることなどは,指揮官クラスでもなっかったのである。また,南欧の人ならば魚も多く食するが,北ヨーロッパの男たちとなると,肉を食べないと元気が出ないと思い込んでいる。いつもは鹿でも猪でも食べるのだから,馬の肉でも変わりはなかったのだった。」

肉を食べなければ元気の出なかった北ヨーロッパの男たち(リチャード一世=獅子心王は英国王であるが,十字軍の主体はフランス人であり,最も勇敢=野蛮な聖堂騎士団=テンプル騎士団はフランス人でである)が,十字軍が終わった頃には,パンを中心に考える人々になっていたと読みとれるのである。

さて,「中世のパン」を基に,パンのレシピの時間に戻る。

中世のフランスにおいて(おそらく他国においても),小麦は統制品である。小麦を作るのも,製粉も,販売も領主(王,世俗領主,聖職領主を問わず)に制限を受けていた。

パン屋でさえ,自由に小麦を買えず,領主に指定された市場において購入しなければならなかった。街中で売られている小麦を使ってパンを焼くことさえ「違反」であり,罰金の対象であった。

小麦が統制品であったのは,小麦が十分に多くなかったからであり,パン屋は小麦の在庫を多く持つことさえも制限されていた。つまり,毎日市場に行って,小麦を買い,

「粉挽」,「ふるい掛け」から行っていた(小麦粉は当時売られていなかったようだ)。そして,パンは,毎日,当時の正餐である昼食に間に合うように焼き上げなければならなかった。午前中には,ほとんどのパンを店頭に並べなければならなかったのである。

加えて,当時のフランス都市でも「焼きたてパン」に価値があったようであり,パンを在庫にしておくことも「禁止」だったのだ。

こうなると,パン屋の仕事は,毎日同じ時刻に同じ作業をすることになる。当時の窯は薪を燃やした熾で焼くのであるから,パン生地発酵と窯の準備は並行作業となる。どちらかが,先行しても遅れてもパンはうまく焼けない。

さらに,パンの重さ(値段)は,厳しく当局に監視(監視人が見回っていた)されていたから,いい加減なパンを焼くわけにもいかない。結果的に,パンづくりは時間に対してかなり厳密は作業にならざるを得なかった。それができることが,「パン職人・パン屋の親方」である必要条件であったのである。

パンを焼き上げる時刻の伝統について,志賀勝栄さんの著書パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)という本に,「いまでもヨーロッパに朝5時半にパンを買いに行くという風習がある」(p. 25)という記述がある。「ヨーロッパ」と一般化しているが,主にフランスパリを中心としてであろう。昼食から朝食用になったとはいえ,いまでも,フランスもパン屋は毎日パンを同じ時刻にパンを売れるようにしなければならない。

これが,同じヨーロッパでも,スイスやドイツの田舎に行くと変わる。舟田詠子さんの著書パンの文化史 (講談社学術文庫)207頁に「パンの保存」という表題の節があるが,そこでは田舎の自家製パンは,2,3週間まとめ焼いていた。という解説がある。

そして,「中世のパン」においても,都市外から市場に売りにくる「農家のパン」は貧しい人には便利な「日持ちにするパン」であったと記述されている(文章は変更した。同書 p. 122)。

まとめると,中世のパン「屋」は同じ時刻に焼き上げるためのパンのレシピを運用していたのである。それは,都市住民に安定してパンを供給するためであった。パン屋がストライキをすると,都市住民が植えることにならからである。

パンのレシピが時間に対して「厳格」なのは,このように,焼き上げ時刻の制約がかなり課されていたからであろう。

これは,おそらく,現代のパン屋さんでも同様であろうが,粉挽や薪の扱いが無くなった分,パン屋の仕事は減じたと思われる。

そして,最も言いたいことは,家庭におけるパンづくりは,レシピの時間を厳格に守る必要はないということである。もちろん,夜中や早朝に作業はしたくないから,それなりのスケジュールは必要であるが,生地の具合を見ながら作業ができれば十分であろう。

少なくとも現代日本において家庭でのパンづくりは,時間に厳格なレシピを守って行う必要はないであろうと考える。

 

 

 

日本人は何を食べさられているのか? 〜小麦編その1:小麦の値段〜

私のパン以外のブログに「日本人は何を食べされらているのか?」という記事が三つある。

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?その2(塩豚のソテーから考える)

・ブログ過去記事:『日本人は何を食べさられているのか?その3(イチゴジャムを作ってみて)

このPane neroというのはパンのことしか書かないブログであるが,パンに関わることなら何でも書く。

よって,小麦のことは,重要な関心事なので,日本人が食べている小麦のことは,こちらのブログに書く。

日本人が食べている小麦は多面的に考えないとならない。しかし,どのような小麦を食べているのかということは知っていて良い。だから,何回かに分けて書く。一回で書けないほど,複雑のなのである。

資料は農林水産省が公開している「麦の需給に関する見通し(平成27年3月)」を基にする(URL:  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/27_mitoosi.pdf )。

この資料は,麦に関する様々なことを教えてくれる。しかし,官庁の資料の特徴として理解し難いように記載されている。また,肝心なことは,明記されていない。そのため,いわゆる行間を読むという作業が必要になる。

この記事においては,輸入小麦の値段構成について考える。上記の資料を基に,小麦の政府売り渡し価格について考えると以下のような推定ができる。

表1 小麦の政府売り渡し価格値段構成推定(平成27年4月分)
表1 小麦の政府売り渡し価格値段構成推定(平成27年4月分)

上記農水省の資料の時点における小麦国際価格は約4.8 $/ プッシェルである。1トン当たりに直すと$220となる。これに,海上輸送費,為替,港湾諸経費が関係する。一方,平成27年4月の小麦政府売り渡し価格平均値は¥60,070である。

上記の農水省資料に用語が示されているが,小麦政府売り渡し価格にはマークアップと呼ばれる輸入差益が上乗せされている。その金額は,資料には明記されていない。よって,マークアップの金額は推定するしかない。

小麦輸入価格は,¥31,222と見積もれる。それに,港湾諸経費として15%を上乗せした。すると,¥35,905となる。この金額と政府売り渡し価格の差額がマークアップの額となる。推定すると,¥24,165となる。これは,政府小麦政府売り渡し価格の40%の相当する。

図1 小麦1トン当たりの政府売渡価格の構成(推定)
図1 小麦1トン当たりの政府売渡価格の構成(推定)

マークアップなるお金が,国内小麦栽培に利用されているであろうから,そのもの自体を批判するつもりはない。

ただし,以下の点において批判する。

1.マークアップは税金ではないということ:マークアップは,農水省が決めるものであって,財務省が決める税金ではない。しかし,国に入る差益なのであるから,「実質的には税金」と考えるべきである。つまり,パンを作る・食べるということは,国に「税金みたいなモノ」を納めていることになる。

2.マークアップにも消費税が課税されるということ:マークアップにも消費税が課税される。まるで,ガソリンの揮発油税に消費税が課税される二重課税と似た構造である。

このことは,小麦粉1 kgの値段として見てみたほうがわかり易い。

農水省の資料「輸入小麦の政府売渡価格について(価格公表添付資料)」(平成28年3月:URL http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/pdf/160309-02.pdf)には,小麦粉の減価率が記載されていて,その値は27%である。その値を用いると小麦粉1 kgの値段構成を以下のグラフのように見積もることができる。

図2 輸入小麦粉1 kgの値段構成推定
図2 輸入小麦粉1 kgの値段構成推定

輸入小麦粉1 kgあたり,国には「マークアップが¥24.16」と「消費税¥17.8」が入ることになっている。合わせると¥41.96円である。小麦粉1 kgあたり税込価格の17.46%である。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日』という実に「つまらない本」がある。しかし,何らか得るところはあって,この本の41頁に世界の主要穀物の輸出国と輸入国の表が掲載されている。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

小麦だけに関して言えば,輸出国トップ4は「米国,カナダ,EU25,オーストラリア」である。一方,輸入国トップ4は「ブラジル,エジプト,日本,アルジェリア・インドネシア」(2007年度)である(アルジェリアとインドネシアは同量)。日本に輸入されている小麦は,農水省資料によると米国産,カナダ産,オーストラリア産である。

相当昔。古代ローマ時代,エジプトは小麦の一大輸出地域であった。「パンとサーカス」として有名な古代ローマのパンはエジプトから輸入された小麦である。

そのエジプトが大量に小麦を輸入しているということに驚く。しかし,日本のように高価な小麦の値段としては販売されてはいないであろう。古代のピラミッドの頃からパンを食べてきたエジプトにおいて,「小麦税」なるものを課税したら,政変が起きるに違いない。

なお,古代ローマにおける「パンとサーカス」の「パン」とは,社会的弱者となったローマ市民に無料で小麦粉を配った(それなりに収入にある人には有料)ことを言う。つまり,当時の社会保障政策である。

「貧乏人は麦を食え」といった総理大臣も戦後いたが,今や,麦を食べるということは,とても高級なことになってしまった。

日本人は,いったい,食べるために,何のお金を払っているのであろうか?


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食パンの値段に関する簡単な計算〜パンは自作がお得であるということ〜

農林水産省の政府小麦売り渡し価格値下げについてのブログ記事を書いた(過去記事:小麦の値段は7.1%安くなるのに食パンは〜〜)。

上記の過去記事においては、敢えて小難しく記事を書いた。敢えてである。

簡単に言うと、以下のようになる。

お店で買う食パンの値段は、政府小麦売り渡し価格の14倍以上である。小麦9円が、125円になっている。

一方、自作のパンは小麦粉の値段のみに影響されるので、政府小麦売り渡し価格の4倍以下の値段となる。

パンは、自作する方がお得なのである。

これは、製粉とパン作りの材料費コストの計算から容易に推定できる。

それぞれのコストを25%とすると、以下のような計算になる。

0.25
× 0.25
—————
= 0.0625=6.25%
—————

お米は、自宅で炊く。日本人ならば、当たり前のことである。たくさん食べたいなら、それが最も安い。

パンも同様ということである。

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小麦の値段は7.1%安くなるが,食パンの値段は0.52%しか安くならない農水省の試算について

日本の小麦は約9割が輸入であり,そのほとんど全てを政府が買い付け,製粉会社などに売っている。

これは,かつては食管法というものに基づいていたが,平成6年より,「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいている。

 

小麦の値段については,平成20年〜平成21年(2008〜2009年)にかけて暴騰し,以下のような本が出版されている。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

しかし,実際には,平成22年度以降,小麦価格は安定し,暴騰すること起きていない。さらに,2016年4月からは,政府売り渡し小麦価格が7.1%値下げされることになっている(本ブログ過去記事:政府売り渡し小麦7.1%値下げ見込み〜やった!パンを安く作れる〜)。

本件については,所管官庁である農林水産庁より,プレスリリースがされている。(URL: http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/160309.html )

しかし,農水省の試算においては,小麦売り渡し価格を7.1%下げても,消費者物価指数(CPI)への影響は▲0.006%程度にとどまるとなっている。

加えて,食パンの値段は,1斤(400g)172円が0.9円しか値下がりしないであろと予測している。

上記の農水省のURLに行って,PDF資料を探して読むと,そう書いてある。

小麦の値段を安くすることのCPIへの影響を憂慮しているのは,もちろん「アベノミクス」への配慮からであろう。

農水省の資料は,食パンというものについて多くのことを教えてくれる。いかに,雑記として,幾つかの計算を示す。

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<食パンの値段とは?>

・食パン1斤(400g)の農水省価格 P1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.09

・農水省が示す食パン1斤あたりの小麦代金(殻付き)の割合R1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.16

・食パン1斤(400g)に占める小麦のコストC1の見積もり。

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・2015年10月政府輸入小麦売り渡し平均価格(殻付)P2

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・食パン1斤に含まれる小麦(殻付)の推定重さW1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.39

・農水省資料から推定する製粉割合R2

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.25

この計算は,説明が必要であろう。Rを求める分母は,年間の国内生産麦と輸入小麦の総量である(国内生産小麦70万トン,輸入小麦512万トン,どちらも,農水省資料に基づく)。一方,分子は,農水省が別に示している資料「麦をめぐる事情について(小麦) 政策統括官 平成27年10月(URL:  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/meguji_271005.pdf )に記載されている平成25年度の小麦粉の生産量(4,868千トン)である。

・食パン1斤に含まれる小麦粉の重さの見積もりW2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.51

・食パン1斤(400g)に占める小麦粉の割合R

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.58

・一般的な食パン1斤300gに換算した小麦粉の量W3。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.04

・1斤300gの食パンに占める小麦のコストC2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.11

 

つまり,小麦の原価9円を,100円以上の値段で買っていることになる。

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<1 kgあたりの小麦粉コストの推定>

・農水省が示す小麦粉の小麦コスト割合 R4。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.18

・小麦粉1 kgの材料費C

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.41

・小麦粉1 kgの販売価格の推定値P2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.32

※小麦粉1 kgが¥200以下ならば,その小麦粉は安いということになる。

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このように試算してみると,買うパンは,小麦の政府売り渡し価格の14倍以上になってしまうが,自作するパンは,4倍程度で済むということになる。

時間と心の余裕があれば,「パン」は自作する方が「お得」ということになる。

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発酵種(天然酵母)のパンは,なぜ値段が高いのか?〜考察その1〜

<概要>

発酵種のパン(天然酵母のパン)の販売価格は,一般に高いと考えられている。その理由は,従来,発酵種のパンの製造工程にあると考えらていた。しかし,家庭で作った発酵種のパンには,市販されているパンよりも多くの小麦粉が使われている。そのため,小麦粉の値段を考慮して,発酵種のパンの販売価格を見積もれば,その販売価格は妥当であると考えることができる。

<1.はじめに>

横浜駅西口の地下街を歩いていたら天然酵母パンが売られていた。三分の一カットのパン・ド・カンパーニュが¥250くらいであったろうか?食パンも¥300以上したように思う。

自分でパンを作っている者として,『高い!!』と思った。

しかし,なぜ高いのであろうかとも,思った。

インターネットを使ってパンの文献を検索していたら,少し古いが興味深い文献を見つけた。以下の文献は,CiNiiという学術文献検索サイトからフリー(つまり無料)で閲覧・ダウンロードすることが可能である。リンクを貼ることは容易であるが,あえて,テキストのURLを記載するに留める。著作権への配慮のためである。

・松尾志穂,浜田知子,米田寿子,天然酵母利用パンについての評価,九州女子大学紀要 自然科学編,Vol. 38,No. 2&4, pp. 25-37(2002/03).(http://ci.nii.ac.jp/naid/110004624913)

また,ここで,著者の方々に,「さん」や「様」などの敬称を付していない。これは,学術論文における引用の慣例に従っているまでである。

松尾さんらの上記の文献において,天然酵母利用パンについて,以下の二つのことが評価されている。

(1)天然酵母利用パンを作るパン屋さんと女子大生の天然酵母利用パンに関する意識調査結果。

(2)ドライイースト,ホシノ酵母,レーズン発酵種の発酵力に関する実験およびそれらの酵母を使って作った食パンの評価。

上記(1)の評価において,興味深いのは,パン屋さんも女子大生も「天然酵母利用パン」を「高い」と考えていることである。

一方,上記(2)の酵母の違いによる発酵力に関する実験は,パンを自宅で作っている私のような者には,とても貴重なデータである。簡単に言えば,ドライイーストは速く発酵し,ホシノ酵母やレーズン発酵種はゆっくり発酵が進むというデータである。

このブログ記事を書こうと思った動機は,上記の(1)に関して,「天然酵母利用パン」が「高い」と思われているのは,「なぜか?」と考えたことである。冒頭に記した通り,横浜のパン屋さんの店頭に並んでいた天然酵母パンを,私も「高い!」と思った。

松尾さんらの文献では,天然酵母利用パンが高い理由について,その製造工程にあるのではないかと記しているのであるが,私は,異なる理由を考えている。

私が考える天然酵母利用パン(以降は,私の言い方に改めて,「発酵種のパン」とする),2016年3月12日に焼いた「強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ」を例にして,議論を進めたい。

パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2
パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2

<2.強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパンーニュの仕様について>

2.1材料とその値段

上記の表に加えて,水を160 g(水道水を38°Cに温度調整,加水率61 % 相当)を使っている。水の値段は,ほぼ,無視してよいであろうと考える。

2.2発酵条件,焼成条件

(1)一次発酵:室温(18°C)× 17 h(15:00〜翌朝8:00)

(2)二次発酵:室温(22〜23°C)× 3.5 h(8:15〜11:45)

(3)焼成条件:210°C × 33 min。

2.3 焼成後のパンの重さ

焼成後のパンの重さは690 gであった。食パン1斤は約300 gであるから,2斤相当のパンになったことになる。

強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
焼成後690 g
焼成後690 g

<3.パンの重さと値段の円グラフ>

以下に,パンの材料の重さと値段を円グラフにして示す。

パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ

上記のグラフから,

パンの材料の重さの78.9%,コストの72.6%を小麦粉が占める。

<4.発酵種のパンが高くなる要因に関する仮説>

4.1製造工程にコスト高の要因を認め得ないということ

上に紹介した松尾さんらの文献では,「天然酵母利用パン」(松尾さんらの文献がそう称している)が高い理由について,その製造工程を挙げている。しかし,私が,発酵種のパンを自作していて,パンそのものを作る工程にはコストを高くする要因はないと考えている。

パン屋さんが,発酵種のパンを販売する際に,発酵時間が長いことは,製造工程の制約にはなるであろうが,志賀勝栄さんが,著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』に記している通り,夕方から朝までの時間帯を利用すれば,一次発酵に要する時間の長さ,デメリットにはならない。

 

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

このことは,高橋雅子さんの著書『少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!』において,夜間の冷蔵発酵を推奨していることにも当てはまる。

少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!

4.2発酵種を使用したパンの値段が「日本のパン」の妥当な値段であろうという仮説

4.2.1パンの材料,特に添加物について

私の作っているパンは,志賀勝栄さんの著書に啓発された「リーンなパン」である。上記の材料表の通り,「小麦粉,酵母,塩,および,水」しか使っていない。

一方,松尾さんらの文献において作っているパン(食パンであるが)には強力粉の重さに対して,5 %の砂糖が添加されている。日本において売られているほとんどのパンは加糖されることが当然と考えれている。文献での松尾さんの所属は「九州女子大学 家政学部 栄養学科」となっているから,管理栄養士や栄養士として,食物のプロフェッショナルであろう。その松尾さんらの文献においてさえ,加糖したパンを作っている。

一方,志賀勝栄さんの著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』には,1993年9月にフランスおいて制定された「デクレ・パン」という「パンの法律」について説明がある(34-37頁)。

その法律の紹介の中で重要と志賀さん記しているのが,「パン屋の定義」と「フランスの伝統的なパンの定義」である。志賀さんの著作を引用は避けるが,フランスの法律に関する以下の部分だけ引用させて頂く。

『第二条 「フランスの伝統的なパンの名称,あるいはこれらの名に結びつくような名称で販売できるのは,その形がどのようなものであれ,その製造の過程でどのような冷凍処理もされておらず,いかなる添加物も加えられておらず,以下のような特徴を示す生地の焼成過程からできたパンに限られる。

1.パン製造用小麦粉,飲料水,調理用の塩のみで構成さていること。

2.パン用のイースト(出芽酵母)とデクレの第四条の定義での天然酵母によって,もしくはこれらパンアルコール発酵作用のうちの一方のみによって発酵されていること。

3.場合によっては,小麦粉の総重量に対する以下の上限で,次のものを含むことができる。

a) 2パーセントのそら豆粉,b)0.5パーセントの大豆粉,c)0.3パーセントのモルトパウダー。』

一方,日本において売られいる廉価な食パンには様々な添加物が入っている。例えば,1斤が約¥100で売られている山崎パンの”The Bread”という名称の食パンの原材料は以下のように表記されている。これだけ色々なものが入っていると,フランスでは,「伝統的なフランスのパン」と称することができない。もちろん,食パンはフランスではなくイギリスのパンであるから,それはそれで,構わないであろう。

山崎パン "The Bread"原材料量名
山崎パン ”The Bread”原材料量名

上記の食パンは約¥100で売られているから,その,製造原価を,販売価格のおよそ四分の一以下であろうと推察する。工業製品は,原料費,加工費,人件費,物流費,その他の経費も含めて値段が決まるから,材料費を四分の一程度にしておかないと,作るだけ赤字になってしまう。大きなパンメーカの作るパンは工業製品であるから,当然,その材料費も,同様に考えてよいであろう。

ここで,以下のような見積もりをすることができる。上の食パンに使われている小麦粉の値段である。食パン1斤は約300 gである。食パン中の小麦粉の分量を私のパン・ド・カンパーニュと同等の65%と仮定する。すると,300 gの食パンの中に195 gの小麦粉が使われていなければならない。

小麦粉1 kgの値段を¥245とすると,195 gの小麦粉の値段は,¥47.8となり,食パンの値段の半分になってしまう。これでは,とても,1斤を¥100で販売することは不可能であろう。

別の見積もりも可能である。1斤を¥100で売るために,その材料を四分の一と仮定する。すると,材料費は,¥25である。そのうち,小麦粉のコスト割合を私のパン・ド・カンパーニュと同等の75 %と仮定する。すると,パン1斤¥100の中の小麦粉のコストは,¥18.75となる。小麦粉1 kgが¥245として重さに換算すると,76.5 gである。食パン1斤300 gのうち25.5 %のみが小麦粉であるという計算になる。すなわち,1斤のパンの中には四分の一しか小麦粉が使わていないということになる。

4.2.2 発酵種のパンが高い理由の仮説

上記に示した私のパン・ド・カンパーニュ焼成後の重さ690 gには450 gの小麦粉を使用している。そのコスト割合は72.6 %である。パン1斤に換算すると,小麦粉の値段は,¥46.09となる。パン全体の材料費とすると,¥63.49である。

材料費を四分の一として,販売価格を決めれば,パン1斤を¥253.9とせざるを得ない。これは,冒頭に記した横浜西口の地下街において売られていた天然酵母食パンと同等な値段になる。

発酵種のパンは,添加物が不要なパンである。発酵種のおかげで,発酵中にアミノ酸など複雑な味が醸し出されるからである。添加物を加えてしまっては,それらの微妙な味わいが台無しになる。

しかし,日本の小麦粉が決して安くはない(それでも,米よりは安い:当ブログの過去記事:メモ書き:米と小麦粉の値段の不合理について参照)。

よって,発酵種のパンは,「高い」のではなく,小麦粉のそのものの値段を反映した「妥当な値段」として販売されているに過ぎないと考えられる。

もちろん,発酵種のパンに「付加価値」を上乗せして,一般的なパンよりも高い値段設定されているということは考えられる。しかし,高すぎるパンは,買われないであろうから,需要と供給が釣り合う価格に収束するはずである。

ここに書いたことは,あくまで素人の「仮説」に過ぎない。しかし,家庭で作るパンと工場やパン屋さんが作るパンの小麦粉の値段が倍以上の値段の差があるとは考え難い。このことは,いずれ,別の機会に,記事にする。

<5.まとめ>

発酵種のパンは,一般に「高い=高額』と考えられている。しかし,発酵種のパンは小麦粉の含有量が多い。よって,日本の小麦粉の値段を考慮すると,その値段は,妥当と考えられる。

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ダウントン・アビーのパン 〜その1(ドラマの中での食パン)〜: 1stシーズンから2ndシーズン初回まで

今の私は,ほとんどテレビを観れない。テレビから流れてくる情報量に,アタマが追いつかないためだ。簡単にいうと「疲れる」からである。

そのため,ニュースや気象情報でさえ見ない。

 

しかし,最近,だいぶ調子も良くなってきて,ダウントン・アビーという英国制作の人気ドラマをHuluを使って観始めた。なお,Amazonビデオでも,DVDでも視聴することが可能である。

嵐の予感

ダウントン・アビーを既に視聴している方には,「何を今更」であろうし,興味がない方には,「何それ」であろう。

家内が観ていたのであるが,興味がなかった。

しかし,映画「メリー・ポピンズ」を観て,ダウントン・アビーを観てみたくなった(メリー・ポピンズについては,このブログにおいて取り上げている:「メリー・ポピンズ」でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以〜)。

メリー・ポピンズは1910年のロンドンの中流階級のMr. Banks家が舞台である(Mr. Banksは銀行役員)。彼の家には,家庭教師のメリー・ポピンズ,メイドが二人,そして,コックがいる。

メリー・ポピンズにパンの記事に書いたが,Mr. BanksとMrs. Banksが朝食に食べるパンは,耳を切り落とした「食パン」である。

私がダウントン・アビーを観ようと思った動機は,ドラマの中にどのようなパンが出てくるであろうか?という関心からである。

ドラマ ダウントン・アビーは英国伯爵家を巡るドラマであり,1stシーズンは1912年の大型豪華客船タイタニック沈没の話題から始まる。つまり,メリー・ポピンズの2年後である。当時の時間の進み方からすれば,ほとんど同時期である。つまり,ほぼ同じ頃の英国のパンを映画とドラマを通じて比較することができる。そういう動機でドラマを観ている。

今は,ダウントン・アビー1stシーズンと,2ndシーズン初回を観終わったばかりだ。記憶が,はっきりしているうちに,ブログ記事にしておきたいと思う。

通い合う想い

ダウントン・アビー1stシーズンは全7話であるが,パンがシーンとしてはっきりと現れるのは,2回しかない。第6話と第7話である。しかも,それは,サンドイッチとして現れる。ディナーのシーンなどは何度もあるのだが,そこにパンは現れない。

運命のいたずら

ダウントン・アビー1stシーズンは1914年に英国がドイツに宣戦布告したことをもって,2ndシーズンに引き継ぐ。

2ndシーズンの初回は,重厚だ。1時間9分しかないのだが,観るのに二日を要した。情報量が,多すぎるのだ。無駄なシーンも台詞も一切ない。集中して観ないと,理解することが難しい。

しかも,パンに関することでは,大きな変化がある。

開戦

朝食に「トーストした食パン」が現れるのである。1916年,開戦から2年後の朝である。

このPane neroというパンのことしか書かないブログにおいて,アーネスト・ヘミングウェイの武器よさらばを取り上げたことがある(過去記事:パンの本:武器よさら〜ヘミングウェイ〜(食パンとロールパンおよびプチパン))。

「武器よさらば」は第一次世界大戦西部戦線のイタリアとオーストリアの戦場が舞台背景である。米国人のイタリア軍への志願兵の主人公は,恋人と戦線離脱(敵前逃亡=軍法会議であれば重罪)し,スイスに亡命する。スイスのカフェで,楽しみにしていたロールパンを朝食に頼むが,「戦時中なのでロールパンはありません」と言われて,「食パン」を頼む。

ダウントン・アビー2ndシーズン初回の最初の15分に,開戦から2年を過ぎた日常として,食パンが朝食のテーブルに置かれている(もちろん耳は切り落とされている)。そして,メリー・ポピンズに現れる食パンと同じように,なぜか,立てた状態でテーブルに置かれている。我が家にパンを立てるものがないので,無理やり状態を作り出してみた。

立てた状態の食パン
立てた状態の食パン

ところで,このブログでは,「サウンドオブミュージック」のパンも取り上げた(過去記事:映画『サウンドオブミュージック』の中のパン〜ローヅパンのディナーを捨てるお話〜)。

サウンドオブミュージックは,1938年以降のオーストリア ザルツブルグが舞台であるが,トラップ一家がディナーで食べるパンは,ロールパンである。ザルツブルグはスイスと近い。

あるテーマをもって(私の場合は,パンである)ドラマや映画を観るというのは,それなりに,楽しいのであるが,「いろいろと考えること」が多く,一気に観るというのはとても難しい。

しかし,なぜ,第一次世界大戦時中にスイスと英国において「食パン」なのか,考えてみたいと思っている。いずれ,このブログの記事にすることもあるであろう。

また,ダウントン・アビーについては,その2,その3と記事を書くような気がするので,この記事は,その1とした。

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メモ書き:米と小麦粉の値段の不合理について

音楽は私の趣味の一つである。

最近,聴くようになったジャンルとしてクラシックとアイルランド音楽がある。クラシックは欧州のキリスト教音楽から発展したものであろうと推察している。そのため,日本人が好んで聴く作曲家の古い時代となるとバッハになるが,バッハのフーガなど宗教的な雰囲気を感じる。

Wikipediaによれば,バッハの生年は1685年である。そうなると,音楽家として活躍したのは,1700年代となり,18世紀ということになる。

一方,まだ,文献等を調べるに至っていないが,アイルランド音楽は17世紀(1600年代)に作曲された曲が,現代でも演奏され続けている。ジャンルの差はあるにしても,アイルランド音楽の歴史は大陸のクラシックと同等以上の歴史を有する。

アイルランド音楽を最も印象的に使っているのが映画「タイタニック」である。タイタニックの中でダンスをするシーンがあるが,そこで流れているのがアイルランド音楽である。

最近,米国シアトル在住のアイリッシュフィドル奏者(回りくどく言うと,アイルランド音楽のヴァイオリン奏者:ヴァイオリン=フィドル)Dale Russという人の演奏をコンサートで聴く機会を得た。そして,CDも購入した。

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アイリッシュフィドル奏者 Dale Russさん (左の女性は日本のアイリッシュフィドル奏者 内藤希花さん

Dale Russはコンサートでは落ち着いた,物静かな方であったが,その心にあるものは,決して静かさだけではないのであろう。購入したCD(彼の最新作である)のタイトルがそれを示している。”SOUL FOOD“というタイトルだ。そのジャケットは以下のようである。

アイルランドのソウルフードとはなにか?このCDジャケットだけで説明は不要であろう。アイルランドでは19世紀末にジャガイモ不作による飢饉が起き,それがきっかけとなって,アイルランドから米国に移民する人が多くいた。タイタニックのレオナルド・ディカプリオはアイルランドから米国に移民しようと考えた一人である。アイルランド音楽は米国音楽のカントリーミュージックなどに大きく影響している。

さて,日本のソウルフードとはなんであろう?

間違いなく,『米』であろう。日本文化が米を基に成り立っていることは,比較文化学者や社会学者や家政学者や農学者の論が不要だ。日本人から米を取り上げたら,何が起きるであろう?

江戸時代末期に米価高騰のため,都市部で打ち壊しなどの暴動が起きているし,もっと昔から,農村では,ずうと,年貢の取り立てに関して,農民一揆が起きている。

戦国時代の名将 甲斐国の武田信玄は,父親に対してクーデタを起こして,領主になるのであるが,そのクーデタに対して,家臣も領民も異議を唱えずに,支持している。未だに,山梨駅には武田信玄像がある。彼が,なぜクーデタを起こしたかというと,作物不作の上に年貢取り立てで,領民が困窮し,それに見かねてのクーデタである。この経緯は,百田基樹著「百姓から見た戦国大名 (ちくま新書)」(2006/9刊)に詳しく書かれている。

さて,長くなったが,ここまでは,前段であって,ここは,パンのことを書くブログであって,ジャガイモは前置きに過ぎない。

しかし,今回は,パンそのものではなく,メモ書きとして,「米と小麦粉の値段の不合理」について書いておきたいと思う。

昨日(2016年3月8日)に米を5 kg買った。今,就労できていないこともあって,節約できることは,自分が惨めにならない程度に行っている。米もその範囲であって,単に「食べるための米」と割り切っていたので,比較的安い米を買っていた。¥1480/5kgであったであろうか。

その米を数ヶ月(平成27年の新米で)食べていたのであるが,どうしても,美味しくないのである。水加減を調整してみたり,浸す時間を長めにしたりと,炊飯の条件を変えることは試みたが,どうしても,美味しくない。

それで,今回は,少し高い米にしてみた。¥1780/5 kgである。私の出身が茨城県なで,多少の地元愛もあり,選択した。

購入した米5 kg 茨城産コシヒカリ
購入した米5 kg 茨城産コシヒカリ

米を買って,家に帰る道すがら,ふと疑問に思った。「今日買った米,1 kgあたり幾らだ?!」

計算は簡単である。 1 kg あたり¥356である。

¥1,780/5 = ¥356/ kg

2か月前の私なら,何の疑問も持たなかった。米の美味しさは,だいたい値段に比例する。美味しさの代償として,米が高くなるのは仕方がない。そう考えていた。

我が家では私と家内の二人で食べるパンのために一週間あたり2 kgの小麦粉を使う。使っている小麦粉は下の写真のものである。強力粉が¥258/kg,薄力粉が¥158/kgである。ほぼ,同量を一週間で使うから,¥416/2kg = ¥208/kgという計算になる。

昭和産業の強力粉と奥村製粉の薄力粉
昭和産業の強力粉と奥村製粉の薄力粉

単位重さあたり,小麦粉よりも1.5倍以上の高い!

日本において,パンは,主食の一つであっても,ソウルフードではない。日本人が力仕事しようと思うとき,どんぶり飯をかっ喰らわなければ,仕事にならない。

小栗旬さん主演の映画「岳 -ガク-』において,「男飯」という,おそらく,一個1合以上を使った特大「にぎりめし」(おにぎり だとか,おむすび でなく,にぎりめしである)をめぐる話題が映画の重要な導入部になっている。

米と小麦粉の値段は,単に経財原則のみによって決まるものではない。日本の歴史・文化・政治・農学を中心とした科学など様々な糸が,解きほぐせるのであろうかと思うほど複雑に絡み合っている。

しかし,稲作農家でなければ,「買うことによってしか入手できない」ソウルフードである「米」が,輸入品かつ製粉に手間もかかっている真っ白な小麦粉よりも,単位重さあたり,1.5倍も高額であるということは,

日本の食料品全般にわたって高額になってしまっているという,日本が暮らしにくい(少なくとも都市生活者にとっては)社会であることにつながっているように思われて仕方がない。

このことは,日本人が『何を食べさせられているのか?』という,とても重要な問題につながる。それを書き出したら,ブログ1記事どころか,本が2,3冊書けてしまう。

ただ,これだけは,記しておきたい。「なぜ日本の米が高く,そして,生産者である農家の皆さんも,消費者である都市生活者も,幸福感が少ないのか?を真剣に考えるべき時になっている」ということを。
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映画『サウンドオブミュージック』の中のパン〜ロールパンのディナーを捨てるお話〜

WOWOWは2月になると米国アカデミー賞特集として,これまでの受賞作品をまとめて放映する。

映画にさほど興味がない私は,今まで気に留めることはなかった。

毎月,WOWOWからは番組紹介の冊子が郵送されてくる。受信料を徴収しておきながら,放送以外ほとんどサービスのないNHKに比べたら,WOWOWのサービス精神は立派であると思っている。

ただ,最近まで,我が家のテレビでWOWOWライブとシネマの予約方法がわからなかった。オンラインの番組表にはWOWOWプライムしか表示されないためである。仕事柄,家電の取扱説明書というのはほとんど読まない。大体,予測が付くからである。

しかし,中には,WOWOWシネマやライブにおいて放映されるプログラムを録画したい場合もある。それで,取説を読んで,それらのプログラムは,録画が日時指定として行えば可能であることを最近知って,随分と先のプログラムを録画予約するようになった。

前置きが長くなったが,そういう方法により,映画『サウンドオブミュージック』を録画視聴した。

3時間もある長い映画なので,4日間に分けて観た。今の私がテレビから出てくる情報量を受け入れることが可能なのは,1日に30分〜1時間程度である。情報量が多すぎて,疲れるのである。それでも,うつのひどい時は,全くテレビを見るということができなかったから,だいぶまともにはなったということになる。

映画の舞台のオーストリアは新婚旅行として行ったところである。ほとんどウィーンで過ごし,一泊二日として,ザルツカンマーグートを経由してザルツブルグに足を伸ばした。もう,23年も前である。

ザルツブルグを半日観光しようと思えば,モーツァルトとサウンドオブミュージックがテーマになる。しかし,私たちは,モーツァルトに少し興味は示したものの,サウンドオブミュージックはほとんど無視した。

新婚旅行をウィーンとしたのは,家内ではなく,私の要望であった。理由は,当時,私の最も興味ある国がオーストリアであったからである。オーストリアというよりも,ハプスブルク家の統治に関心があったというべきであろう。当時,『ハプスブルク家 (講談社現代新書)』という本を読んでいたからである。

今更ながらサウンドオブミュージックを観たのは,ハプスブルク家のオーストリア・ハンガリー帝国が第一次世界大戦後に崩壊して,共和制となり,第二次世界大戦中,ナチス・ドイツに併合されるが,その頃の雰囲気を感じてみたいと思ったからである。決して,新婚旅行の思い出に浸るためではない。

そして,このブログは,パンのことしか書かないブログである。

映画の中にどんなパンが出てくるのかは,当然ながら,重大な関心事であった。

サウンドオブミュージックの中にパンが出てくるのは,ワンシーンだけである。ジュリー・アンドリュースが演じる主人公マリアがトラップ家に家庭教師としてやってきた当日の夕食のシーンに,「小道具」というか「背景」というか,そんな感じで写っているのに過ぎない。

パンのアップがなかったので判別ができなかったが,ロールパンのように思えた。それも,日本のバターロールというよりも,クロワッサンに近い,しかし,クロワッサンほどバターが多くなさそうなロールパンである。一人に一つずつ皿に置かれていた。

サウンドオブミュージックの時代は,ナチスのオーストリア併合後であるから,1938年以降である。1940年代始めといってもいいかも知れない。

このブログにおいて,『パンの本:武器よさらばーヘミんグウェイ〜(食パンとロールパンおよびプチパン)』という記事を投稿している。『武器よさらば』は第一次世界大戦中,イタリアとオーストリアの戦場が舞台であり,武器よさらばと思った主人公と恋人はイタリアからスイスに亡命し,スイスのロールパンを朝食に食べたいと思いカフェに入るが,永世中立国のスイスにさえ,「戦時中のためロールパン」はなく。「食パン」を食べる。サウンドオブミュージックは武器よさらばよりも,おおよそ25年後のヨーロッパを描いている。

また,ジュリー・アンドリュースが同様に主演したメリー・ポピンズについても,このブログのパンに関わることとして,記事にしている。メリー・ポピンズは,武器よさらばよりも,更に数年前(おおよそサウンドオブミュージックのおおよそ30年前)の第一次世界大戦前の英国ロンドンが舞台であり,その映画に登場するパンはやはり食パンである:過去記事:映画『メリー・ポピンズ』でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以

トラップ一家は,ナチスのオーストリア併合と自らがナチスに拘束されることを嫌って,スイスに亡命する。富も名誉も捨てである(トラップ家の主人はオーストリア軍の大佐である:ナチスに併合されたオーストリア軍は,ナチスに協力して戦争する必要があった)。

奇妙な言い方になるが,戦争中であっても「ロールパン」を食べることが可能な暮らしを捨てて,「食パン」を食べるしかないかない生活を選ぶということである(戦時中,食パンでさえ食べることが可能であったのかという問題は別にして)。

日本において消費されるパンのほとんどは,食パンであるという。

当ブログにおいて,しばしば引用する図書『ウィリアウ・ルーベル著 「パンの歴史 (「食」の図書館)」』はパンに関わる様々な文化について教えてくれる。本の中に以下のような一節がある。
「富裕層と貧困層のパンのちがいを古今共通のひと言であらわせば,貧困層の食べるパンはいつも安い,ということだ。現在,それは大量生産の白パンを意味する」。日本において,大量生産される安いパンとは,どのようなパンのことを指すであろうか。パンを買うと『白いお皿』がもらえるのようなものではないかと考えている。

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映画「メリー・ポピンズ」でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以〜

このPane neroというパンのことしか書かないブログでは,「パンを焼く日」と題した記事を何回か投稿している。

パンを焼く日(その1:2016年2月14日週用のパン)

パンを焼く日(その2:2016年2月21週のパン)

パンを焼く日(2016年2月28日週用のパン)

「パンを焼く日」というのは,意味ありげに感じる方もいるかもしれないが,これは,映画メリー・ポピンズの中において,メリー・ポピンズが家庭教師をつとめる英国ロンドンのBanks家におけるMrs. Banksとメイドの会話中,メイドの台詞にある言葉である。

メリー・ポピンズのパンのことを書く前に,私個人のことを記すと,

私は映画を多く見る方ではない。映画館に行くのは,年に数回である。しかも,お金を払ってみる映画は選り好みが激しい。

まず,暴力シーンの多い映画は観ない(ハリウッドが得意とする映画であるが)。さらに,アニメーションも観ない。スタジオジブリもディズニーもである。加えて,ミュージカル映画も基本的には観ない(最近,傾向は変わりつつあるが)。このような好みであるから,メリー・ポピンズという映画は私の好みではない。だから,今まで観ていなかった。

金を払ってみる気はしない(これは,レンタルであっても)が,2015年の大晦日にNHK BSにて放映があった。ある興味があって,録画をした。

どのような興味かというと,第一次世界大戦前の英国,特に,ロンドンの雰囲気を知りたいと思ったのである。それは,下の一冊の本がきっかけであった。山上 正太郎著 第一次世界大戦 忘れられた戦争 (講談社学術文庫)(2010/1刊)
50歳もとうに過ぎたというのに,恥ずかしいことに,第一次世界大戦のことを,あまりよく知らない。上記の本では,知らないことが多々あった。第一次世界大戦はよく知られているように,オーストリア・ハンガリー連合帝国のは皇太子が,サラエボで暗殺されることをきっかけとして始まるのであるが,それがどのような背景であり,現代にどのような影響しているのかを,ほとんど知らずに来たということである。

第一次世界大戦開戦は1913年である。一方,メリー・ポピンズは1910年のロンドンである。つまり,第一次世界大戦直前,大英帝国が全盛期であった頃のお話である。その頃のロンドンの雰囲気というか,英国人の思うことを感じてみたいと思ったのが,メリー・ポピンズを今更観てみようと思った動機である。

なお,現在に至るまで続く,第一次世界大戦が英国,欧州全体,および,世界全体に与えた影響については,ジョージ・フリードマン著『新・100年予測――ヨーロッパ炎上』(2015/7刊)に詳述されているが,パンのこととは直接関係しない。この本の『読書感想文』は私のもう一つのパン以外のことを書いているブログに記事にしてある(関心を持って頂いたのなら,本を読んで頂くのが最良であるが,時間がないようであれば,稚拙な読書感想文であるが,お読みいただければ幸いである。私のブログ記事:「『新・100年予測(ジョージ・フリードマン著)』を読んだ記録」)

さて,映画メリー・ポピンズにおけるパンの話である。約2時間の映画の中に,パンに関わるシーンは2カ所のみである。

メリー・ポピンズがBanks家の家庭教師となって,一家に騒動が巻き起こる。一家の主人である,Mr. Banksは規律を重要視する銀行役員のジェントルマンである。そして,Mrs. Banksは良き母であり,「女性参政権」を求めて街宣活動する行動的な女性である(1910年時点において,英国でさえ,女性参政権はなかったということになる)。

一つのシーンは,映画の前半,Mr. & Mrs. Banks二人の朝食シーンである。そのテーブルに,現代の日本ではコンビニのサンドイッチ用に使われているような薄いスライスの食パンがコンガリとトーストされて,4,5枚立てて置かれている。サンドイッチ用としたのには理由があって,パンの耳がない状態のトーストである。メリー・ポピンズの中でパンが映るのはそのシーンのみであった。

もう一つのシーンは,コミカルなMrs. Banksとメイドの会話である。銀行役員であるジェントルマンのMr. Banksであるから,メイド二人,家庭教師(メリー・ポピンズ),そして,コックを雇っている。Mrs. Banksは家事をしないらしい。

Mrs. Banksが街宣活動に出かけようとすると,Mr. Banksと一緒に外出していた子供たち二人だけが,煙突掃除のバート(このシーンのときには煙突掃除)に連れられて帰って来る。その日は,メリー・ポピンズの週に一回の休日の火曜日であった。

Mrs. Banksはメイドの一人に,子供たちの面倒を見てくれるように頼むが,メイドは,「私はブラス(真鍮の食器などであろう)を磨かなくてなならないので出来ないと断る」。それでは,Mrs. Banksはコックには頼めないかしら?とメイドに尋ねるが,メイドはそれに対しても,

「今日は『パンを焼く日』なのでコックは忙しくて無理」と答える。

この会話から,Mr. & Mrs. Banksの朝食のテーブルにあったパンはコックが焼いたパンなのであろうと推察できる。

ここで,全く違う観点から,Mr. & Mrs. Banksの朝食のテーブルにあったパンについて考えることもできる。二人の前にあるパンにはなぜ,耳がないトーストであったのか?と,いうことだ。
ウィリアム・アーベル著 『パンの歴史 (「食」の図書館)』(2013/8刊)』という本に,以下の記述がある。

「近代になってだいぶ時間がたってからも,ヨーロッパの上流階級の多くは,出される前にクラストを削ったり,やすりでこそり落としたりしたパンを好んでいた」(pp. 80-81)。

クラストとはパンの皮のことである。大英帝国の上流階級に相当するBanks家でも,クラストのないパンを食べていると推察できる(もちろん,偶々であるかもしれない)。

映画メリー・ポピンズのストーリー上,子守を誰にさせるかというのは,とても重要なシーンなのであるが,朝食のテーブルにあるパンがどんなものであれ,関係はない。バケットがあっても良いし,ロールパンであっても良い。しかし,大英帝国首都ロンドンのジェントルマン(それは,本来の意味のビジネスマンとも同意義であるが)の食卓のパンは,クラストのないパンなのである。

これは,私がメリー・ポピンズを観ようと思った動機に正しく合致する,大英帝国全盛期のロンドンがどんな風であったのかを示してくれている。

繰り返しになるが,私が,『パンを焼く日』という題名の記事を書くようになったのは,これがきっかけである。そうでなければ,単に,「今週のパン」だけで良い。

しかし,なぜ,Banks家のパンは食パンであったのであろう?それは,ジュリー・アンドリュースが主演したもう一つの映画「サウンドオブミュージック」と比較してみると,朧気げに理解できるのであるが,「サウンドオブミュージック」は,まさに,ここ数日で観ている(ミュージカル映画なので,今まで観ていなかった=なんと教養のないことか!)ので,またの機会に記事にしたいと思う。

パンを作りながら,こんなことも考えていたりする。なお,ヘッダーにある写真は私のパンのブログの過去記事:リーンなパンはトースタで炙っても焦げないに使用した写真を転用したものである。著作権の関係上,メリー・ポピンズのシーンを使うわけにはいかないのである。

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家で作るパンだってコストにこだわる。だから薄力粉を使う。実績はできた!

先日,薄力粉だけのパンを作った。これは,極端な例であるが,私が作るパンは,パン・ド・カンパーニュであろうがプチパンであろうが薄力粉を入れている

理由は,簡単である。パンを安く作るためである。

うちの近所のスーパーで売られている代表的な小麦粉は,以下の4種類である。

1.日清製粉 カメリア : ¥298/kg

2.昭和産業 強力粉  :¥258/kg

3.日清製粉 フラワー :¥198/kg

4.PB薄力粉(奥村製粉製1等粉):¥158/kg

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奥村製粉製 Star Select プライベートブランド 薄力粉 (¥158/kg税別)

ライ麦粉と全粒粉は別の高級スーパー(成城石井)で買うしかないので,高いのは諦めている。

パイオニア ライ麦粉 500g(Amazonで¥399)
パイオニア 全粒粉 400g(Amazonで¥324)

パンに関する本である,

および,

を読んだも者として,一等粉の強力粉や薄力粉よりもライ麦粉や全粒粉の方が単位重さあたりの値段が高い!ということ自体,許容できないでいる。

そして,強力粉は,薄力粉よりも1 kgあたり,エイやっと¥100も高価である。

私はリーンなパン(粉+水+酵母+食塩)しか作れない。

水は水道水。食塩は漬物やスパッゲッティを茹でる時に使うのと同じである(ほぼ100%が塩化ナトリウムNaClである。塩化マグネシウムMg2Cl3と塩化カルシウムCaCl2などという混ざり物なしである)。1 kgで¥100くらいだと思う。

水道水なんかでパンを作ったら美味しくないではないか!と思われるかもしれないが,水道水には,有難い塩素イオンClが入っている。これは,ドウ(パン生地のこと)発酵中の余計な菌を殺すのに役立ってくれるであろう。それに,パンを作るときに,食塩を入れるのであるから,加水した時点において,塩化ナトリウムNaClはナトリウムイオンNa+と塩素イオン Clに分かれる。意図的に入れるイオンなのであるから,もともと水に入っていたとしても,影響があるとは思い難い。

酵母のベースはルヴァン種(リキッドルヴァン)であるが,それだけだと酸味が強いので,レーズン発酵種を混ぜたり,あれば,他の発酵種を混ぜる。

そうなると,私が作るパンの材料費は,ほとんど小麦粉の値段で決まることになる。以前,自分のパンの材料費を計算したことがある(過去記事リンク)。

その計算から得た結論は,店頭で食パン1斤(焼成後の重さで約300 g)が,どうして,¥150〜¥300という値段で売ることが可能なのであろうという,疑問である。

私が作るパン・ド・カンパーニュは粉量400〜450 g加水率60〜65%であるが,焼成後の重さでは,700 gに近い。つまり,食パン2斤分である。日清製粉カメリアだけで作ると,粉代だけで¥120〜¥134にもなる!!

工場に勤めていた者のコスト感覚では,材料費の4倍以上の販売価格にしないと商売にならない。小さな店舗だとしても,二倍にはしないと,光熱費その他の経費がまかないえないはずである。だから,食パン1斤が¥150というのは,粉の値段を考慮すると,とても信じられない値段に思える。

パン屋さんが,大量に小麦粉を買うので,安価に仕入れていたとしても,小麦粉は国の統制品である(『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律』という法律で売り買いが細かく規制されている)。実態は知らないが,まさか,業者向けは,小売の値段の半値ということはないであろう。もし,そうなら,フランス革命が起きてもおかしくないことだ!小麦粉の値段を安くしろと!誰に言うかというと,上記の法律を所管する農林水産大臣に対してである!!!

私の作るパンは,食事のためのパンだから,生活費の一部だ。家計簿上では米や野菜を買うとの同じ費目の食費である。だから,一円でも安くパンを作りたい。

長々と書いたが,そういう理由で,薄力粉を混ぜている。1 kgあたり¥100安いということは,薄力粉だけでパン・ド・カンパーニュを作ると仮定すれば,材料費は,エイやっと三分の二から半分近くになり得るということである。

幸いなことに,先日作った薄力粉だけのパン(レーズン発酵種を使用)は,思いの外,美味しかった。薄力粉だけのパンは軽いのである。物理的にも食感もだ。と,いうか,私が作りたかったパンに近いものであった。

薄力粉100%のパン焼成結果
薄力粉100%のパン
DSCN7671
粉量200 gに対して焼成後は260 gのパンが薄力粉だけのパンになった

おそらく,グラニュー糖や牛乳を混ぜたら,歯触りのよい,お菓子のようなパンになるであろう。

しかし,それでは,リッチなパンになるので,実際には作ることはないであろうが。

私からすれば,薄力粉で十分に美味しいパンが作れる!その実例を一つ得たことが,とても嬉しいのである。粉が安ければ,それだけ,多くのパンを作れるからだ。

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