一週間におけるリキッド・ルヴァンの種継ぎパターンについて

私は,一週間のうち1日にまとめて数種類のパンを焼く(例えば,過去記事:パンを焼く日(2016年3月20日週のパン四種類))。そのパンのほとんどにリキッド・ルヴァンを使用している。

このような場合,リキッド・ルヴァンの種継ぎはとても面倒なものとなる。

以前は,週に何日かパンを焼いていたため,その都度種継ぎをすれば済んでいたが,週に1日しか焼かないということは,ドウ(パン生地)を作るのも週に1日のみである。

リキッド・ルヴァンのようなサワー種に分類される発酵種は乳酸菌がその主要成分であるから,そうは長く保たせることができない。

ライ麦粉のみから起こすサワー種であれば,「乾燥」という方法により保存が効く(舟田詠子著「パンの文化史 (講談社学術文庫)」pp. 68-71)ようであるが,取り扱いが容易なリキッド・ルヴァンではそうはいかない。

リキッド・ルヴァン中の乳酸菌寿命は不明である。しかし,一週間を保たせることは難しいであろう。そうなると,週に複数回の種継ぎが必要になる。

一方,ドウを作る際には,できるだけ「活きの良い」種を使いたい。そうやっているうちにできたリキッド・ルヴァンの種継ぎパターンが以下のようなものである。

一週間に1日しかパンを焼かない私のリキッド・ルヴァン種継ぎパターン
一週間に1日しかパンを焼かない私のリキッド・ルヴァン種継ぎパターン

パンを混捏するのは週末金曜日か土曜日である。焼成日は土曜日か日曜日である。そうなると,金曜日にはリキッド・ルヴァンをそれなりの量が欲しい。

リキッド・ルヴァンの種継ぎはほぼ1日でできるから,水曜日〜木曜日に粉量100g以上により種継ぎする。粉量の1.1倍の水を加えるから,リキッド・ルヴァンは220g以上できることになる。容器はボウルである。

リキッド・ルヴァン 種継ぎ完了後(約23時間)
リキッド・ルヴァン 種継ぎ完了後(約23時間)

元種は,パン焼成日となる土曜日か日曜日の翌日に行う。粉量は30〜50gである。元種は,ドウ混捏日に残った分を全て入れてしまう。これで,およそ,150g〜200g程度の種継ぎになる。容器は,ポリプロピレン製のタッパーを利用している(ダイソーのもの)。ボウルでは大きすぎるのである。

粉量少量のリキッド・ルヴァン種継ぎ完了後の状態
粉量少量のリキッド・ルヴァン種継ぎ完了後の状態

それを,水曜日の元種にする。すると,木曜日には,約350gを超えるくらいのリキッド・ルヴァンができることになる。

この方法で,三週間ほど種継ぎを行っているが,また,どうにかパンを作れている。

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パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの詳細仕様

1.材料

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料詳細
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料詳細

重さと費用の内訳をグラフ化すると以下のようになる。

なお,加水量は170g(加水率57%相当)である。よって,ドウ(パン生地)の重さは,823gとなる。

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料重さ
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料重さ
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料費
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの材料費

日本のライ麦粉が高価であることがわかる。しかし,ドウの発酵と焼成後の味を考えるとライ麦粉を使わない訳にはいかない。

なお,強力粉と薄力粉を混ぜることによりエネルギー成分は以下のようになる(100gあたり)。

粉のブレンドのよるエネルギー成分の変化
粉のブレンドのよるエネルギー成分の変化

2.工程

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの工程実績
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンの工程実績

赤の矢印が手を動かさなければならなかった部分である。焼成中の35分を含み,55分に過ぎない。パン・ド・カンパーニュは手間がかからないパンであると考えることができる。さすがは,フランスの「田舎パン」である。男性が作ってみるのにとても適していると考える。

なお,焼成条件は200°C×35分である(過去記事:2016年3月20日週のパンの焼成条件参照)。

3.焼成結果

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ焼成後770g
パン・ド・カンパーニュ焼成後770g

823gー770g=55gがどっかに行ったことになる。全体の6.7%である。

クラムの状態。

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態

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2016年3月20日週のパンの焼成条件

2016年3月20日秋のパン(過去記事:パンを焼く日(2016年3月20日週のパン四種類))においては,焼成条件に関する実験を試みた。

 

2016年3月20日週のパン四種類
2016年3月20日週のパン四種類

簡単にいってしまえば,焼成温度を下げた。

・プチパン:230°C→200°C。

・パン・ド・カンパーニュ:210°C→200°C。

パンの文献(本ブログ:参考文献参照)を読んでいると,パンの歴史は1万年以上ある(1)〜(3)にもかかわらず,最新のパンの研究においても,その中心は,「発酵」に重点が置かれている(6)ー(8),(10)

しかし,パン作りにおける最終工程である焼成条件をどのように決めるかについての知見を得ることができない。

唯一,志賀勝栄さんの著書「パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)(1)において,フランスパンの代表であるバケットの焼成を高温(250°C)とし短時間(20 min)とする旨の記載がある。しかし,志賀勝栄さんのもう一つの著書「酵母から考えるパンづくり(4)を読むと上火255°C,下火225°Cとして,32 minとなっている。出版年が後者の著作の方が古いため,前者の著作の間にレシピが変わったことは考えられる。

このような背景においては,自分で作るパンの焼成条件は,自分で見出すしかない。

そのため,今回の記事のような実験を試みることになった。

温度を下げた動機は,パンを少し柔らかくするためである。私の作るパンはリーンなパンであり,いわゆるハード系と呼ばれるパンになる。しかし,リーンなパンは,時間の経過に伴い,内部(クラム)の水分が表面(クラスト)の染み出してるため,徐々に柔らかくなる。しかし,日数が一定以上すぎると,その染み出しが終わり,表面から乾燥し始める。よって,内部にどれだけ水分を保持されるかということがパンの日保ちに関係する。一方,焼成温度を下げると,パンの生焼けが起きやすい。表面に焼き色が付かない状態である。さらに,焼成条件には,焼成時間というもう一つのパラメータが関与する。

こういう,面倒なことは,理屈を考えるより,やってみる,つまり,「実験」する方が早く答えが出る。

実験において重要なのは,実験条件だけではなく,結果をどう評価するかである。評価方法を事前に決めておかないと,その実験は,全く意味をなさない。

今回の実験における評価項目は焼き色,釜伸び具合,および,クラムの状態とした。ただし,プチパンは切断していないため,焼き色と釜伸び具合となる。釜伸びは,下面の割れ具合で評価する。

結果を焼成の順番に示す。

1.無塩プチパン:焼成条件 200°C×24 min

無塩プチパン2016年3月20日バージョン上面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン上面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン下面
無塩プチパン2016年3月20日バージョン下面

2.プチパン:焼成条件 200°C×23min

プチパン 2016年3月20日バージョン上面
プチパン 2016年3月20日バージョン上面
プチパン2016年3月20日バージョン下面
プチパン2016年3月20日バージョン下面

3.レーズンプチパン:焼成条件200°C×20 min

レーズンプチパン2016年3月20日バージョン上面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン上面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン下面
レーズンプチパン2016年3月20日バージョン下面

4.パン・ド・カンパーニュ:焼成条件 200°C×35 min

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン下面
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン下面
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョンクラムの状態

上記の写真を見ると,上面の焼き色は,個人的判断であるが,妥当と考えている。また,1〜4すべてにわたって,下面の極端な焼き色(いわゆる焦げ)はない。

しかし,1の無塩プチパンと2のプチパンの下面には割れが多く発生している。3のレーズンプチパンと4のパン・ド・カンパーニュの下面の割れはないと考えてよいであろう。

4 パン・ド・カンパーニュのクラムの状態も,妥当と考えている。

上記の写真から考えて,プチパンおよびパン・ド・カンパーニュとも焼成温度を200°Cに低下させたことは,上面の焼き色から,問題なさそうである。しかし,プチパンの焼成時間23 minとか24 minは長時間過ぎたように思われる(下面に割れが生じてしまっていることにより)。

パン作りとは,すべての工程にトラップが仕掛けられている。全く気を抜くことができない作業だらけである。そういう作業は総じて「職人作業」と呼ばれるのであるが,エンジニアの作業は,「職人作業」を一つひとつ,理屈に当てはめて一般化することである。そういうことを,自作のパンに対して行っている。

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パンを焼く日(2016年3月20日週のパン四種類)

2016年3月20日週のパン四種類。

焼成順に。

1.無塩パン

・強力粉 250g

・薄力粉 250g

・リキッド・ルヴァン 63g

・白無花果発酵種+レーズン発酵種 82g

・加水率 55%相当

無塩パン 2016年3月20日バージョン
無塩パン 2016年3月20日バージョン
無塩パン 焼成後730 g
無塩パン 焼成後730 g

2.強力粉と薄力粉のプチパン

・強力粉 200g

・薄力粉 200g

・リキッド・ルヴァン 63g

・レーズン発酵種+白無花果発酵種 84g

・食塩 6g

・加水率 55%相当

リキッド・ルヴァン+レーズン発酵種+白無花果発酵種のプチパン
リキッド・ルヴァン+レーズン発酵種+白無花果発酵種のプチパン
プチパン焼成後 590g
プチパン焼成後 590g

3.レーズン発酵種のレーズンパン

・薄力粉 400g

・レーズン発酵種 100g

・食塩 6g

・グラニュー糖 12g

・レーズン 30gくらい

・加水率 53%相当

レーズンパン2016年3月20日バージョン
レーズンパン2016年3月20日バージョン

 

レーズンパン焼成後600g
レーズンパン焼成後600g

4.パン・ド・カンパーニュ

・強力粉 250g

・薄力粉 200g

・ライ麦粉 50g

・食塩 8g

・リキッド・ルヴァン 63g

・レーズン発酵種+白無花果発酵種 80g

・加水率 57%相当

パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン
パン・ド・カンパーニュ2016年3月20日バージョン

 

パン・ド・カンパーニュ焼成後770g
パン・ド・カンパーニュ焼成後770g

・成形から焼成完了まで約5.5時間。成形2時間弱。焼成(オーブン予熱込み)3.5時間。

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食パンの値段に関する簡単な計算〜パンは自作がお得であるということ〜

農林水産省の政府小麦売り渡し価格値下げについてのブログ記事を書いた(過去記事:小麦の値段は7.1%安くなるのに食パンは〜〜)。

上記の過去記事においては、敢えて小難しく記事を書いた。敢えてである。

簡単に言うと、以下のようになる。

お店で買う食パンの値段は、政府小麦売り渡し価格の14倍以上である。小麦9円が、125円になっている。

一方、自作のパンは小麦粉の値段のみに影響されるので、政府小麦売り渡し価格の4倍以下の値段となる。

パンは、自作する方がお得なのである。

これは、製粉とパン作りの材料費コストの計算から容易に推定できる。

それぞれのコストを25%とすると、以下のような計算になる。

0.25
× 0.25
—————
= 0.0625=6.25%
—————

お米は、自宅で炊く。日本人ならば、当たり前のことである。たくさん食べたいなら、それが最も安い。

パンも同様ということである。

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小麦の値段は7.1%安くなるが,食パンの値段は0.52%しか安くならない農水省の試算について

日本の小麦は約9割が輸入であり,そのほとんど全てを政府が買い付け,製粉会社などに売っている。

これは,かつては食管法というものに基づいていたが,平成6年より,「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」に基づいている。

 

小麦の値段については,平成20年〜平成21年(2008〜2009年)にかけて暴騰し,以下のような本が出版されている。

食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日

しかし,実際には,平成22年度以降,小麦価格は安定し,暴騰すること起きていない。さらに,2016年4月からは,政府売り渡し小麦価格が7.1%値下げされることになっている(本ブログ過去記事:政府売り渡し小麦7.1%値下げ見込み〜やった!パンを安く作れる〜)。

本件については,所管官庁である農林水産庁より,プレスリリースがされている。(URL: http://www.maff.go.jp/j/press/seisaku_tokatu/boeki/160309.html )

しかし,農水省の試算においては,小麦売り渡し価格を7.1%下げても,消費者物価指数(CPI)への影響は▲0.006%程度にとどまるとなっている。

加えて,食パンの値段は,1斤(400g)172円が0.9円しか値下がりしないであろと予測している。

上記の農水省のURLに行って,PDF資料を探して読むと,そう書いてある。

小麦の値段を安くすることのCPIへの影響を憂慮しているのは,もちろん「アベノミクス」への配慮からであろう。

農水省の資料は,食パンというものについて多くのことを教えてくれる。いかに,雑記として,幾つかの計算を示す。

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<食パンの値段とは?>

・食パン1斤(400g)の農水省価格 P1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.09

・農水省が示す食パン1斤あたりの小麦代金(殻付き)の割合R1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.16

・食パン1斤(400g)に占める小麦のコストC1の見積もり。

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.27

・2015年10月政府輸入小麦売り渡し平均価格(殻付)P2

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.33

・食パン1斤に含まれる小麦(殻付)の推定重さW1

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.39

・農水省資料から推定する製粉割合R2

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.25

この計算は,説明が必要であろう。Rを求める分母は,年間の国内生産麦と輸入小麦の総量である(国内生産小麦70万トン,輸入小麦512万トン,どちらも,農水省資料に基づく)。一方,分子は,農水省が別に示している資料「麦をめぐる事情について(小麦) 政策統括官 平成27年10月(URL:  http://www.maff.go.jp/j/seisan/boueki/mugi_zyukyuu/pdf/meguji_271005.pdf )に記載されている平成25年度の小麦粉の生産量(4,868千トン)である。

・食パン1斤に含まれる小麦粉の重さの見積もりW2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.51

・食パン1斤(400g)に占める小麦粉の割合R

スクリーンショット 2016-03-18 11.27.58

・一般的な食パン1斤300gに換算した小麦粉の量W3。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.04

・1斤300gの食パンに占める小麦のコストC2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.11

 

つまり,小麦の原価9円を,100円以上の値段で買っていることになる。

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<1 kgあたりの小麦粉コストの推定>

・農水省が示す小麦粉の小麦コスト割合 R4。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.18

・小麦粉1 kgの材料費C

スクリーンショット 2016-03-18 11.40.41

・小麦粉1 kgの販売価格の推定値P2。

スクリーンショット 2016-03-18 11.28.32

※小麦粉1 kgが¥200以下ならば,その小麦粉は安いということになる。

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このように試算してみると,買うパンは,小麦の政府売り渡し価格の14倍以上になってしまうが,自作するパンは,4倍程度で済むということになる。

時間と心の余裕があれば,「パン」は自作する方が「お得」ということになる。

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無塩パン 2016年3月12日バージョンの仕様

1.材料

・強力粉 250 g,

・薄力粉 250 g。

この粉のブレンドにより,粉のエネルギー成分は以下の表1のようになる。たんぱく質の割合から,およそ,中力粉相当の小麦粉になったと考える。

table1_flour_blend.png
表1 無塩パンの小麦粉ブレンドのエネルギー成分

・リキッド・ルヴァン 63 g,

・レーズン発酵種 40 g

・白無花果発酵種 40 g。

・水(38°Cに温度調整,水道水) 162 g(加水率55%相当)。

表1に示したブレンド粉のたんぱく質量から,強力粉のたんぱく質量12 %に換算すると,上記の加水率は,以下の式1のよう考えられる。

equation1.png
式1 加水率の強力粉等価相当値

式1の加水率の計算結果から,次回は,加水率を高めることは可能であろう。

2.発酵・焼成条件

・一次発酵 室温(約18°C)× 17 h。

・二次発酵 室温(約22〜23°C)× 2 h。

・焼成条件 210°C × 20 min。

3.焼成結果

無塩プチパン 2016/3/12バージョン
無塩プチパン 2016/3/12バージョン
無塩プチパン 焼成後 730 g
無塩プチパン 焼成後 730 g

焼成後の含水率は(730-500-30)/530=0.377=37.7 %と見積もることができる。

4.無塩パンの食し方

無塩パンは昼食にスープと一緒に食す。プチパン8個で730 gであるので,1個あたり約91 gとなる。これだけあると,昼食用にスープと一緒に食せば,十分にお腹を満たすことができる。

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発酵種(天然酵母)のパンは,なぜ値段が高いのか?〜考察その1〜

<概要>

発酵種のパン(天然酵母のパン)の販売価格は,一般に高いと考えられている。その理由は,従来,発酵種のパンの製造工程にあると考えらていた。しかし,家庭で作った発酵種のパンには,市販されているパンよりも多くの小麦粉が使われている。そのため,小麦粉の値段を考慮して,発酵種のパンの販売価格を見積もれば,その販売価格は妥当であると考えることができる。

<1.はじめに>

横浜駅西口の地下街を歩いていたら天然酵母パンが売られていた。三分の一カットのパン・ド・カンパーニュが¥250くらいであったろうか?食パンも¥300以上したように思う。

自分でパンを作っている者として,『高い!!』と思った。

しかし,なぜ高いのであろうかとも,思った。

インターネットを使ってパンの文献を検索していたら,少し古いが興味深い文献を見つけた。以下の文献は,CiNiiという学術文献検索サイトからフリー(つまり無料)で閲覧・ダウンロードすることが可能である。リンクを貼ることは容易であるが,あえて,テキストのURLを記載するに留める。著作権への配慮のためである。

・松尾志穂,浜田知子,米田寿子,天然酵母利用パンについての評価,九州女子大学紀要 自然科学編,Vol. 38,No. 2&4, pp. 25-37(2002/03).(http://ci.nii.ac.jp/naid/110004624913)

また,ここで,著者の方々に,「さん」や「様」などの敬称を付していない。これは,学術論文における引用の慣例に従っているまでである。

松尾さんらの上記の文献において,天然酵母利用パンについて,以下の二つのことが評価されている。

(1)天然酵母利用パンを作るパン屋さんと女子大生の天然酵母利用パンに関する意識調査結果。

(2)ドライイースト,ホシノ酵母,レーズン発酵種の発酵力に関する実験およびそれらの酵母を使って作った食パンの評価。

上記(1)の評価において,興味深いのは,パン屋さんも女子大生も「天然酵母利用パン」を「高い」と考えていることである。

一方,上記(2)の酵母の違いによる発酵力に関する実験は,パンを自宅で作っている私のような者には,とても貴重なデータである。簡単に言えば,ドライイーストは速く発酵し,ホシノ酵母やレーズン発酵種はゆっくり発酵が進むというデータである。

このブログ記事を書こうと思った動機は,上記の(1)に関して,「天然酵母利用パン」が「高い」と思われているのは,「なぜか?」と考えたことである。冒頭に記した通り,横浜のパン屋さんの店頭に並んでいた天然酵母パンを,私も「高い!」と思った。

松尾さんらの文献では,天然酵母利用パンが高い理由について,その製造工程にあるのではないかと記しているのであるが,私は,異なる理由を考えている。

私が考える天然酵母利用パン(以降は,私の言い方に改めて,「発酵種のパン」とする),2016年3月12日に焼いた「強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュ」を例にして,議論を進めたい。

パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2
パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン その2

<2.強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパンーニュの仕様について>

2.1材料とその値段

上記の表に加えて,水を160 g(水道水を38°Cに温度調整,加水率61 % 相当)を使っている。水の値段は,ほぼ,無視してよいであろうと考える。

2.2発酵条件,焼成条件

(1)一次発酵:室温(18°C)× 17 h(15:00〜翌朝8:00)

(2)二次発酵:室温(22〜23°C)× 3.5 h(8:15〜11:45)

(3)焼成条件:210°C × 33 min。

2.3 焼成後のパンの重さ

焼成後のパンの重さは690 gであった。食パン1斤は約300 gであるから,2斤相当のパンになったことになる。

強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
強力粉と薄力粉のパン・ド・カンパーニュの材料と値段の表
焼成後690 g
焼成後690 g

<3.パンの重さと値段の円グラフ>

以下に,パンの材料の重さと値段を円グラフにして示す。

パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料の重さの割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ
パンの材料のコスト割合の円グラフ

上記のグラフから,

パンの材料の重さの78.9%,コストの72.6%を小麦粉が占める。

<4.発酵種のパンが高くなる要因に関する仮説>

4.1製造工程にコスト高の要因を認め得ないということ

上に紹介した松尾さんらの文献では,「天然酵母利用パン」(松尾さんらの文献がそう称している)が高い理由について,その製造工程を挙げている。しかし,私が,発酵種のパンを自作していて,パンそのものを作る工程にはコストを高くする要因はないと考えている。

パン屋さんが,発酵種のパンを販売する際に,発酵時間が長いことは,製造工程の制約にはなるであろうが,志賀勝栄さんが,著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』に記している通り,夕方から朝までの時間帯を利用すれば,一次発酵に要する時間の長さ,デメリットにはならない。

 

パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)

このことは,高橋雅子さんの著書『少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!』において,夜間の冷蔵発酵を推奨していることにも当てはまる。

少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!

4.2発酵種を使用したパンの値段が「日本のパン」の妥当な値段であろうという仮説

4.2.1パンの材料,特に添加物について

私の作っているパンは,志賀勝栄さんの著書に啓発された「リーンなパン」である。上記の材料表の通り,「小麦粉,酵母,塩,および,水」しか使っていない。

一方,松尾さんらの文献において作っているパン(食パンであるが)には強力粉の重さに対して,5 %の砂糖が添加されている。日本において売られているほとんどのパンは加糖されることが当然と考えれている。文献での松尾さんの所属は「九州女子大学 家政学部 栄養学科」となっているから,管理栄養士や栄養士として,食物のプロフェッショナルであろう。その松尾さんらの文献においてさえ,加糖したパンを作っている。

一方,志賀勝栄さんの著書『パンの世界 基本から最前線まで (講談社選書メチエ)』には,1993年9月にフランスおいて制定された「デクレ・パン」という「パンの法律」について説明がある(34-37頁)。

その法律の紹介の中で重要と志賀さん記しているのが,「パン屋の定義」と「フランスの伝統的なパンの定義」である。志賀さんの著作を引用は避けるが,フランスの法律に関する以下の部分だけ引用させて頂く。

『第二条 「フランスの伝統的なパンの名称,あるいはこれらの名に結びつくような名称で販売できるのは,その形がどのようなものであれ,その製造の過程でどのような冷凍処理もされておらず,いかなる添加物も加えられておらず,以下のような特徴を示す生地の焼成過程からできたパンに限られる。

1.パン製造用小麦粉,飲料水,調理用の塩のみで構成さていること。

2.パン用のイースト(出芽酵母)とデクレの第四条の定義での天然酵母によって,もしくはこれらパンアルコール発酵作用のうちの一方のみによって発酵されていること。

3.場合によっては,小麦粉の総重量に対する以下の上限で,次のものを含むことができる。

a) 2パーセントのそら豆粉,b)0.5パーセントの大豆粉,c)0.3パーセントのモルトパウダー。』

一方,日本において売られいる廉価な食パンには様々な添加物が入っている。例えば,1斤が約¥100で売られている山崎パンの”The Bread”という名称の食パンの原材料は以下のように表記されている。これだけ色々なものが入っていると,フランスでは,「伝統的なフランスのパン」と称することができない。もちろん,食パンはフランスではなくイギリスのパンであるから,それはそれで,構わないであろう。

山崎パン "The Bread"原材料量名
山崎パン ”The Bread”原材料量名

上記の食パンは約¥100で売られているから,その,製造原価を,販売価格のおよそ四分の一以下であろうと推察する。工業製品は,原料費,加工費,人件費,物流費,その他の経費も含めて値段が決まるから,材料費を四分の一程度にしておかないと,作るだけ赤字になってしまう。大きなパンメーカの作るパンは工業製品であるから,当然,その材料費も,同様に考えてよいであろう。

ここで,以下のような見積もりをすることができる。上の食パンに使われている小麦粉の値段である。食パン1斤は約300 gである。食パン中の小麦粉の分量を私のパン・ド・カンパーニュと同等の65%と仮定する。すると,300 gの食パンの中に195 gの小麦粉が使われていなければならない。

小麦粉1 kgの値段を¥245とすると,195 gの小麦粉の値段は,¥47.8となり,食パンの値段の半分になってしまう。これでは,とても,1斤を¥100で販売することは不可能であろう。

別の見積もりも可能である。1斤を¥100で売るために,その材料を四分の一と仮定する。すると,材料費は,¥25である。そのうち,小麦粉のコスト割合を私のパン・ド・カンパーニュと同等の75 %と仮定する。すると,パン1斤¥100の中の小麦粉のコストは,¥18.75となる。小麦粉1 kgが¥245として重さに換算すると,76.5 gである。食パン1斤300 gのうち25.5 %のみが小麦粉であるという計算になる。すなわち,1斤のパンの中には四分の一しか小麦粉が使わていないということになる。

4.2.2 発酵種のパンが高い理由の仮説

上記に示した私のパン・ド・カンパーニュ焼成後の重さ690 gには450 gの小麦粉を使用している。そのコスト割合は72.6 %である。パン1斤に換算すると,小麦粉の値段は,¥46.09となる。パン全体の材料費とすると,¥63.49である。

材料費を四分の一として,販売価格を決めれば,パン1斤を¥253.9とせざるを得ない。これは,冒頭に記した横浜西口の地下街において売られていた天然酵母食パンと同等な値段になる。

発酵種のパンは,添加物が不要なパンである。発酵種のおかげで,発酵中にアミノ酸など複雑な味が醸し出されるからである。添加物を加えてしまっては,それらの微妙な味わいが台無しになる。

しかし,日本の小麦粉が決して安くはない(それでも,米よりは安い:当ブログの過去記事:メモ書き:米と小麦粉の値段の不合理について参照)。

よって,発酵種のパンは,「高い」のではなく,小麦粉のそのものの値段を反映した「妥当な値段」として販売されているに過ぎないと考えられる。

もちろん,発酵種のパンに「付加価値」を上乗せして,一般的なパンよりも高い値段設定されているということは考えられる。しかし,高すぎるパンは,買われないであろうから,需要と供給が釣り合う価格に収束するはずである。

ここに書いたことは,あくまで素人の「仮説」に過ぎない。しかし,家庭で作るパンと工場やパン屋さんが作るパンの小麦粉の値段が倍以上の値段の差があるとは考え難い。このことは,いずれ,別の機会に,記事にする。

<5.まとめ>

発酵種のパンは,一般に「高い=高額』と考えられている。しかし,発酵種のパンは小麦粉の含有量が多い。よって,日本の小麦粉の値段を考慮すると,その値段は,妥当と考えられる。

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ダウントン・アビーのパン 〜その1(ドラマの中での食パン)〜: 1stシーズンから2ndシーズン初回まで

今の私は,ほとんどテレビを観れない。テレビから流れてくる情報量に,アタマが追いつかないためだ。簡単にいうと「疲れる」からである。

そのため,ニュースや気象情報でさえ見ない。

 

しかし,最近,だいぶ調子も良くなってきて,ダウントン・アビーという英国制作の人気ドラマをHuluを使って観始めた。なお,Amazonビデオでも,DVDでも視聴することが可能である。

嵐の予感

ダウントン・アビーを既に視聴している方には,「何を今更」であろうし,興味がない方には,「何それ」であろう。

家内が観ていたのであるが,興味がなかった。

しかし,映画「メリー・ポピンズ」を観て,ダウントン・アビーを観てみたくなった(メリー・ポピンズについては,このブログにおいて取り上げている:「メリー・ポピンズ」でのパン〜当ブログ『パンを焼く日』の所以〜)。

メリー・ポピンズは1910年のロンドンの中流階級のMr. Banks家が舞台である(Mr. Banksは銀行役員)。彼の家には,家庭教師のメリー・ポピンズ,メイドが二人,そして,コックがいる。

メリー・ポピンズにパンの記事に書いたが,Mr. BanksとMrs. Banksが朝食に食べるパンは,耳を切り落とした「食パン」である。

私がダウントン・アビーを観ようと思った動機は,ドラマの中にどのようなパンが出てくるであろうか?という関心からである。

ドラマ ダウントン・アビーは英国伯爵家を巡るドラマであり,1stシーズンは1912年の大型豪華客船タイタニック沈没の話題から始まる。つまり,メリー・ポピンズの2年後である。当時の時間の進み方からすれば,ほとんど同時期である。つまり,ほぼ同じ頃の英国のパンを映画とドラマを通じて比較することができる。そういう動機でドラマを観ている。

今は,ダウントン・アビー1stシーズンと,2ndシーズン初回を観終わったばかりだ。記憶が,はっきりしているうちに,ブログ記事にしておきたいと思う。

通い合う想い

ダウントン・アビー1stシーズンは全7話であるが,パンがシーンとしてはっきりと現れるのは,2回しかない。第6話と第7話である。しかも,それは,サンドイッチとして現れる。ディナーのシーンなどは何度もあるのだが,そこにパンは現れない。

運命のいたずら

ダウントン・アビー1stシーズンは1914年に英国がドイツに宣戦布告したことをもって,2ndシーズンに引き継ぐ。

2ndシーズンの初回は,重厚だ。1時間9分しかないのだが,観るのに二日を要した。情報量が,多すぎるのだ。無駄なシーンも台詞も一切ない。集中して観ないと,理解することが難しい。

しかも,パンに関することでは,大きな変化がある。

開戦

朝食に「トーストした食パン」が現れるのである。1916年,開戦から2年後の朝である。

このPane neroというパンのことしか書かないブログにおいて,アーネスト・ヘミングウェイの武器よさらばを取り上げたことがある(過去記事:パンの本:武器よさら〜ヘミングウェイ〜(食パンとロールパンおよびプチパン))。

「武器よさらば」は第一次世界大戦西部戦線のイタリアとオーストリアの戦場が舞台背景である。米国人のイタリア軍への志願兵の主人公は,恋人と戦線離脱(敵前逃亡=軍法会議であれば重罪)し,スイスに亡命する。スイスのカフェで,楽しみにしていたロールパンを朝食に頼むが,「戦時中なのでロールパンはありません」と言われて,「食パン」を頼む。

ダウントン・アビー2ndシーズン初回の最初の15分に,開戦から2年を過ぎた日常として,食パンが朝食のテーブルに置かれている(もちろん耳は切り落とされている)。そして,メリー・ポピンズに現れる食パンと同じように,なぜか,立てた状態でテーブルに置かれている。我が家にパンを立てるものがないので,無理やり状態を作り出してみた。

立てた状態の食パン
立てた状態の食パン

ところで,このブログでは,「サウンドオブミュージック」のパンも取り上げた(過去記事:映画『サウンドオブミュージック』の中のパン〜ローヅパンのディナーを捨てるお話〜)。

サウンドオブミュージックは,1938年以降のオーストリア ザルツブルグが舞台であるが,トラップ一家がディナーで食べるパンは,ロールパンである。ザルツブルグはスイスと近い。

あるテーマをもって(私の場合は,パンである)ドラマや映画を観るというのは,それなりに,楽しいのであるが,「いろいろと考えること」が多く,一気に観るというのはとても難しい。

しかし,なぜ,第一次世界大戦時中にスイスと英国において「食パン」なのか,考えてみたいと思っている。いずれ,このブログの記事にすることもあるであろう。

また,ダウントン・アビーについては,その2,その3と記事を書くような気がするので,この記事は,その1とした。

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パン・ド・カンパーニュ 2016年3月12日バージョンの仕様

<1.材料>

・強力粉(昭和産業強力) 350 g

・薄力粉(奥村製粉) 100 g

・ライ麦粉(パイオニア企画) 50 g

・リキッド・ルヴァン 63 g

・レーズン発酵種 42 g

・白無花果発酵種種 40 g

・食塩 8g

・水(38°C温度調節水道水) 190 g(加水率 61 %相当)

※発酵種を多めに入れ,加水率を下げた仕様とした。

<2.一次発酵>

室温(約18°C)×約 17 h (夕方16時〜朝9時)

<3.二次発酵>

室温(約22〜23°C)×約3.5 h

<4.焼成条件>

210°C× 35 min

<5.焼成後の状態>

パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン
パン・ド・カンパーニュ 2016/3/12バージョン

焼成後の重さ785 g。

パン・ド・カンパーニュ焼成後の重さ 785 g
パン・ド・カンパーニュ焼成後の重さ 785 g

<6.焼成後三日目におけるクラムの状態>

焼成後三日目にパンにナイフを入れた。

パン・ド・カンパーニュ2016年3月12日バージョンのクラム
パン・ド・カンパーニュ2016年3月12日バージョンのクラム

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