この記事には,その1とその2の過去記事がある。
過去記事
自分で作って食べるためのパンを考える(その1:材料)〜バターロールレシピへの疑問から〜
自分で作って食べるためのパンを考える(その2:ドウ作り=生地捏ね)〜バターロールレシピへの疑問から〜
<1.はじめに>
パン作りにおいて一次発酵は,最も重要な工程である。
ただし,ドウを作る時点(材料の計量と生地捏ね)において,どのように発酵するかは,決まってしまう。よって,一次発酵にどのような手法を採用するかということは,ドウを作る前に決めることであって,パン設計の問題である。
作ろうとするパンの設計(コンセプトと呼んでも良いが,設計であると考える)が異なる場合,一次発酵の条件を議論しても有意義ではない。
しかし,パン作りを難しくしているモノがバターロールのレシピにはある。それは,議論というよりも指摘と呼ぶべきであろう。以下に,私の実績例と比較し,指摘事項を述べる。
パターロールレシピ | 私の実績例 |
・生地の表面がなめらかになるように
・丸めて ・ボウルに入れ, ・ラップをかけて ・30 °C位の場所で ・約60分間発酵させる。 |
・生地を丸めて
・生地の量にあった容器に入れ ・ラップをかけて, ・周囲を輪ゴムにより止めて ・室温または冷蔵庫野菜室で ・12〜20時間発酵させる。 ・この記事の例は室温16 °Cにおいて ・約17時間発酵させた。 |
私の実績例のパンの一次発酵例を示そう。



<2.バターロールの一次発酵についてのパン作り初心者の観点からの指摘事項>
1.発酵温度について:バターロールのレシピにおいては,発酵温度を『30 °C位』と仕様を規定している。夏であれば,エアコンの温度調整により,その温度環境は作りやすい。また,寒い季節であっても,ホイロと一般に呼ばれ発酵器 を利用すれば,温度環境を作り出せる。
しかし,パンをこれから作ってみようと思う人にとって,ホイロを必要とすることは,パン作りの敷居を高くする。
私も,持ってみたい気はしているが,写真のホイロであっても3万円以上するから,おいそれとは購入できない。そのような,背景があって,私は,室温発酵と冷蔵発酵を併用している。
2.発酵時間について:バターロールのレシピにおいては,発酵時間を『約60分間』と規定している。これも,パンを作ってみようとする者を悩ませる仕様である。二点を指摘したい。
(1)約60分は忙しい:60分の発酵時間では,途中,発酵具合を確認する手間などを考えると,ほぼ,生地に付きっ切りになる必要がある。ずうっと側にいなくとも,キッチンタイマーなど利用して,15分間隔程度(発酵終了間際であれば5分間隔程度)に発酵具合を確認する必要があるであろう。それでは,他のことが片手間にしかできない。つまり,バターロールのレシピに従うと,かなり忙しいことになる。
(2)温度条件による発酵時間のばらつきがわからない:約60分という一次発酵時間は発酵温度30 °Cの場合であろう。では,発酵温度が変わったら,発酵時間はどのように変化するのであろう。一般論で言えば,温度が高い場合には,発酵の進みは速く,温度が低い場合には,発酵の進みは遅くなる。そうなると,発酵中の生地から目を離すことができない。上記(1)において指摘した一次発酵中は忙しいということが,より助長されることになる。
3.発酵容器の選定について:バターロールのレシピにはボウルを使って発酵させるとなっている。パン作りの初心者であれば,間違いなく,ボウルを使うであろう。また,この連載のその2においてドウ(パン生地のこと)作りのためにもボウルを使うとこと記した。ドウを作るボウルと一次発酵をさえるボウルは同じとして良いのか,それとも別にすべきか。
このような問題は,パン作りに慣れた人であれば,問題にしない。答えば,別である。つまり,パンを作るためには,二つのボウルが必要である。
では,その二つのボウルは同じサイズか,それとも,異なるサイズかという別の疑問が,次に生じる(そんなことは常識的にわかる,と,言われそうであるが,わからない人が多いから,パン作りは難しいと思われている)。
私も,そのような疑問を抱いた。パン作りの練習のため,一日に,条件の異なるドウを作ろうした時,我が家にあるボウルが数が足りなかったのだ(今は,それなりに数はある)。一日に異なる条件のドウを作ると,一回にできるドウの量は少なくなる(コスト的な面と食べ切れるかという問題のためである)。この答えは,また,いずれ詳しい記事を書こうと考えているが,答えだけを書いてしまえば,以下のようになる。
(1)粉量300 g以上の場合:我が家の小さめのボウルを使う(容量は1リットル以上はあるが)。
(2)粉量200 g以下の場合:上の写真にあるように,ポリプロピレン製のタッパーを使う。容量は1リットルの場合と0.7リットルの場合がある。ともに,ダイソーで購入したものである。プラスチック容器を使うことに抵抗感を抱く方もいるかも知れない。まして,いわゆる,百均の製品である。しかし,材質がポリプロピレンであれば,技術的に問題ないであろう判断した。ただし,課題はある。一次発酵が完了し,容器からドウを取り出す際に,ボウルより取り出し難い。
<3.まとめ>
設計の異なるパンの一次発酵の仕様を議論しても有意義ではない。ただし,一次発酵の温度30 °Cと約60分間の仕様を家庭において実現しようとすると,少なくとも,これからパン作りをしてみようとする人には,問題が多々あるように考える。
※パン作りとは設計に基づくモノであり,エンジニアの仕事に似ている。しかし,それを実行に移せる時間と心の余裕があるかという問題は別である。
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