アルミプレートをオーブンシート・銅板・スリップピールの代用にすること(その3)

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過去記事

・調達性について:アルミプレートをオーブンシート・銅板・スリップピールの代用にすること(その1)

・コストについて:アルミプレートをオーブンシート・銅板・スリップピールの代用にすること(その2)

1.はじめに

オーブン機能電子レンジを使用し,パンを焼く際に,オーブンシート代用として金属板を使用する場合にアルミプレートを私は選択した。その理由を,その3において,アルミプレートと銅板の機械的性質,熱的性質,および,化学的性質の三つの観点から考察し,家庭においてパンを焼く際に,オーブンシートや銅板の代用としてアルミプレートは十分に実用的であることを示す。

2.アルミプレートをオーブンシートなどの代用として使用する上で検討したこと

(1)アルミプレートと銅板の板厚および質量(重さ)

(2)アルミプレートと銅板のオーブンの中での伝熱特性の違い

(3)アルミと銅の腐食性(手入れのし易さ)

3.物性値

物性値は,八光電機株式会社が公開している物性値を利用した。

利用する物性値は,密度,比熱,熱伝導率である。アルミ,銅(純銅),および,参考のためステンレス鋼(八光電機殿のデータベースではクロムニッケル鋼 18Cr 8Niとされているモノである。これは,家庭用ステンレスとし一般的なオーステナナイト系ステンレス鋼SUS304の組成である。米国製の鍋などではStainless steel 18.8などと記載されている材料である。

表1:物性値
物性値 単位 アルミ 純銅 ステンレス鋼
密度(@20° C) kg/m3 2700 8960 7820
比熱(@300 °C) J/kg°C 1040(@300 °C) 414 (@300 °C) 502(@20 °C)
熱伝導率 W/m K 230 (@300 °C) 366 (@300 °C) 16 (@20 °C)
融点(@300 °C) °C 660.2 1083 1410

4.具体的な検討

4.1 機械的性質の検討(主に重さ)

前提とする寸法 幅300 mm×奥行き300 mm × 厚さ 2mm。この板の体積は,180 ml = 0.18 l=1.8×10-4 m3である。この体積と表1の密度より,板の質量(重さ)が計算できる。[質量]=[体積]×[密度]である。

表2 板の質量(重さ):幅300 mm×奥行き300 mm × 厚さ 2mm
単位 アルミ 純銅 ステンレス鋼
板の質量(重さ) kg 0.486 1.613 1.408

表2の示す結果は,アルミは銅よりもとても軽いということである。

図1に私が購入したアルミプレートの重さを測った結果を示す。計算値に一致している。

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図1 300 mm×300 mm× 2mmのアルミプレートの重さ実測結果

例えば,板に750 g(粉量450 g,加水率65 %=私が作るパン・ド・カンパーニュの条件)の生地を載せて,ミトンを両手にしてオーブンに入れることを考慮すれば,板の重さは軽い方が優位である。

4.2 熱的性質の検討

4.2.1 幅300 mm×奥行き300 mm × 厚さ 2mmの板を温めるために必要な熱エネルギー

表1の材料の比熱,および,表2の板の質量から,板を温める熱エネルギーを計算できる。ここでは,オーブンに入れる前の板の温度が20 °Cとし,パンを焼く温度を250°Cとする。計算は,[熱エネルギー]=[比熱]×[質量]×[250 °C – 20 °C] である。なお,エネルギーの単位はJ(ジュール)であるが,家庭用オーブン機能付電子レンジは電力をエネルギーとして使用する。そのため,参考として,電力料金検針票に記載される単位であるkWh(キロワット時)を併記する。

表3 板を温めるためために必要な熱エネルギー
単位 アルミ 純銅 ステンレス鋼
熱エネルギー kJ (kWh) 116.3 (0.0322) 153.6 (0.0427) 162.6 (0.0452)

表3の示す結果は,アルミプレートを温めるエネルギーが最も小さいことを示す。実利的には,アルミの場合が,オーブン機能電子レンジを使う場合,最も電気代が安くなり得る

4.2.2 板に載せたパン生地をオーブンに入れた直後に板の下面から上面に伝わる熱量

板に載せたパン生地をオーブンに入れた直後に板の下面から上面に伝わる熱量は表1の熱伝導率を使って計算できる。パン生地の温度を20 °C,板下面の温度を250 °Cとした場合には,計算式は[熱量]=[熱伝導率]×[2 mm = 2×10-3 m]×[250 °C-20 °C=230K]である(注:Kは絶対温度の単位のケルビンである)。

表4 パン生地をオーブンに入れた直後に下面から生地に伝わる熱量
単位 アルミ 純銅 ステンレス鋼
熱量 W (J/s) 105.8 168.4 7.4

表4の結果は,金属板を下から熱した場合,銅が最も熱を伝えやすく,次にアルミであることを示す。

4.2.3 考察

ここで,オーブンとガスレンジの熱の伝わり方について,考察する必要がある。図2にオーブンにアルミプレートを置いた様子を,図3にガスレンジに鍋をかけた状態を示す(このような写真をインターネット上に掲載したことを家内に知られた,ひどく叱られそうである。言い訳として,我が家のオーブンは2001年製である。15年も使っていれば,それなりにはなってしまう)。

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図2 オーブン内にあるみプレートを置いた状態

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図3 鍋をガスレンジにかけた状態

オーブンは,予熱により庫内がほぼ一定の温度(熱平衡状態)にするため,板の上面からも熱が伝わる。一方,ガスレンジの場合には,熱は,鍋の下からのみ伝わる。つまり,表3に示した板を温める熱エネルギーはオーブンの場合には,板の上下面両側から伝わる。もちろん,パンには,全面から熱が伝わる。そうでなければ,食パンの型焼きができない。

オーブンの熱源は我が家オーブンでは,どうやら側面にありそうなので,下面から伝わる熱エネルギーだけを考慮することは重要ではない。一方,ガスレンジの場合は,表4により検討した下面から伝わる熱量が重要となる。

よって,オーブンシート代わりに使う金属として,銅板を良とする伝熱工学的な根拠はないと考える。アルミの物性値でも十分に実用的であると考えられる。

4.3 アルミと銅の腐食性(手入れのし易さ)

金属の腐食は金属表面の酸化の問題であり,化学の問題である。私は化学が苦手なである。よって,私の下手な一般論ではなく,私がパン・ド・カンパーニュ用の発酵籠を購入した際に添付されていた馬嶋屋菓子道具店殿のチラシ(図4)のを転載させて頂く。サビ(腐食)に対して,アルミは○(良い)が銅は×(悪い)と表記されている(図5)。

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図4 馬嶋屋菓子道具店チラシ
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図5 パン用道具 材料の特徴一覧

アルミと銅の腐食性の違いは,一般論として以下のように言える。

(1)アルミの腐食性:アルミは本来腐食し易い材料である。そのため,アルミの表面にはすぐに酸化アルミニウム(Al2O3)の薄膜ができる。この酸化アルミニウムは透明かつ硬い(サファイヤやルビーの本体も酸化アルミニウムである)。アルミプレートが汚れた場合,こすり洗いをして表面に筋状の傷が付くが,その筋も直ぐに酸化され,酸化アルミニウムになる。つまり,アルミプレートは手入れがし易い

(2)銅の腐食性:銅は貴金属であり,錆びにくい。しかし,銅には緑青と呼ばれる青サビが発生する。理化学辞典によれば,大気中に微量に存在する二酸化硫黄または硫化水素との反応生成物CuSO4・3Cu(OH)2が緑青の主成分であるとされている,と,記されている。

私が,銅板を使うのに躊躇した理由は,その2に記したコストと銅の腐食の問題である。銅板は手入れが大変であろうと考えた

5.結論

家庭用オーブン機能電子レンジを用いて,その庫内をより広く使うために金属板を使用する場合において,従来,銅板が良いと言われていた(1)(2)が,アルミプレートは,十分に実用的であると考える。

参考文献

1.高橋雅子,少しのイーストでゆっくり発酵パン—こんな方法があったんだ。おいしさ再発見!,PARCO出版 (2007).
2.高橋雅子,ゆっくり発酵 バゲット&リュスティック (少しのイーストでつくるパン3),PARCO出版 (2008).
3.岩波書店,理化学辞典第5版 CD−ROM版(1999).

<参考>

私が購入した幅300 mm×奥行き300 mm×板厚2mmにアルミプレートは下の写真にAmazonのリンク先を貼ってあり,そこから購入可能である(価格:¥ 1,739 + ¥ 600 関東への配送料)

エスコ 300x300x2.0mmアルミ板 EA441VC-21

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